三国劇場 |
魯粛七変化 | |
作: とます 様 |
VS |
何とか関羽を説き伏せ荊州を取り戻さねば……。 しかし、あの頑固者。私が言っても聞かないだろう。 どうしたものか……。 |
そうだ。関羽とて人の子。 女性相手に無茶なことはすまい。ここは我が秘術をもって……。 |
将軍、女性が面会を申し出ております。 陳情したき事があるとか。 |
ほう、そうか。これへ通せ。 |
関羽様、私は今は荊州の民ですが、元は呉の生まれ。 |
蜀呉の抗争で、今や郷里との行き来もままなりません。 お願いです。私ども民のためにも、荊州を呉にお返しくださいませ。 |
……そうか。 ならば我が兵に命じて、あなただけ呉にお送りいたそう……魯粛殿。 |
くっ……何故だ、何故わかった!? |
そんな野太い声の女性がいるか。 者ども、コヤツを叩き出せ! |
くそっ、憶えておれ! |
おのれ関羽め、我が変装を見破るとは!! |
やはり、女装なんかしても無理ですよ。 |
うむ……だが方向性としては悪くなかったと思うぞ。 |
(そ、そうかな?) |
他に、関羽に対して意見できそうな奴といえば……。 |
なに、曹操殿が直々に訪ねてきたと? |
はい。 内密の話があり、お忍びで来られたそうです。 |
よかろう。 ここへお通しせよ。 |
関羽よ、久しいな。 |
……。 |
話というのは他でもない。 かつての私との友誼に免じて、ここは呉に荊州を…。 …って、こら、何をする! 離せ! |
こんな大柄な曹操がいるか。 者ども、叩き出せ! |
くっ……これで勝ったと思うな! |
……考えてみれば、今は関羽と曹操とは敵同士。 敵の言うことを聞くはずもなかったな。 |
いや、そういう問題ではないと思います……。 |
もっとストレートに、義兄弟に化けて行けば成功するだろう!! |
( 聞いてないよ、この人…… ) |
張飛が訪ねてきたと? ……よかろう。ここへ通せ。 |
よう、兄貴。 俺も考えたんだが、やっぱり天下三分の計に従って 蜀の安泰を図るためには、ここらで呉に荊州を譲っ……。 |
ぐぉっ!? 何をする、兄貴! いきなり殴るとは!! |
張飛が、そんな分別じみたことを言うか。捕らえろ! |
くっ、またしても! |
全く魯粛も執念深い男だ。 また、いつ現れるか分からんな。注意せねば。 |
将軍、殿がお越しです。 |
何? ふん……今度は兄者に化けてきたか。 その手には乗らんぞ。 |
おう、関羽。久しいな。 荊州の地で、孤軍奮闘しておるオマエをねぎらってやりたくなっての。(笑) ほれ、酒も持参したのだぞ? |
(何を馴れ馴れしい) |
久々に飲もうではないか。 蜀の本拠地、益州の酒じゃ。 オマエにも飲ませてやりたくてのぉ。(笑) |
(おおかた酒に薬でも入れておるのだろう) |
おい、どうした関羽? |
魯粛、騙されんぞ、覚悟! |
か、関羽、耳を掴むな、放せ! 痛い、痛い!! |
もっともらしく、こんな大きい付け耳まで用意しおって! 今すぐ化けの皮を剥いでくれるわ! |
ぎゃっ!! |
むっ? この血は……まさか本物? |
ぐぅぅ……。 |
た、誰かある! 華佗を呼んでまいれ! |
うぅぅ……。 |
……え、えーと……兄者……? ……てっきり魯粛だと思って……。 |
……。(怒) |
……耳、大丈夫……? |
あの……今すぐ付け直させるから……。 |
……帰る。(怒) |
天猿 コメント: | いやはや。意思の疎通とは、ままならないものですなぁ♪ ……と言え、マジメな話。 西暦214年から219年にかけての関羽が、 相当の重責に苦しめられていたのは事実です。 劉備に任されていた荊州の領有権は、 事実上 一国の運営に近いものでした。 そして、劉備の本拠地だった益州の成都と、 関羽が守る荊州の江稜は、あまりにも離れていたのです。 そう考えると、劇中の関羽にも、ちょっと同情の余地アリですねぇ。(苦笑) |