三国劇場
張遼、長江に散る
作: とます 様




建業にて



孫権 何とかして張遼を破らねば、呉の安泰はない。

よし、ここは一計を案じて……。




魏の陣中



兵士 張将軍。

間諜の報告によれば、
長江のほとりにいる女性が将軍を捜しているようです。



張遼 何? 

女性が私に会いたいと?

兵士 はっ。将軍のお越しを今か今かと待っているとか。

……素敵な女性だそうですよ。

張遼 いらんことを言わんでよろしい。

しかし、素敵な女性か……。



張遼 ( こんなカンジの、可憐な お嬢さんであろうか? )




張遼 ( いやいや。あるいは…… )


張遼 ( 夫ある身にもかかわらず、この張遼の魅力に
 心を奪われてしまった、イケナイ奥様なのかもしれぬ♪ )



張遼 ふっ、私も罪作りな男であることよ。(笑)

……よしッ、行ってみることにしよう。供は無用だ!

兵士 将軍、それは危険です!

張遼 無粋な奴だな。少しは気を利かせたらどうだ?

では、行ってくるぞ! 
帰りは明朝になるかもな。ハッハッハ!




張遼は単身、長江へと向かったが。

あろうことか呉軍の待ち伏せを受け、重傷を負ってしまった。


そして数日後。

曹丕が直々に見舞いにやってきた。




曹丕 張遼よ、何でも素敵な女性に会ったと聞いたが。

……一体このケガは何としたことだ?




張遼 す、素敵な女性ではなく……。

曹丕 ……ふむ?







張遼 ……不敵な徐盛でした……。


曹丕 ……。



張遼 おあとがよろしいようで……。

曹丕 全然よろしくない!!


バシッ


張遼 ぐふっ!!

曹丕 は!? 思わずツッコミを入れてしまった。

張遼、大丈夫か? おい、張遼!?



魏の五将軍筆頭、張遼、ここに陣没。



後世、呉の子供たちが張遼の最後を聞くと、

泣いている子でさえも笑ったという。






作者様 コメント: 張遼が徐盛の計に敗れたのと
曹丕が自ら見舞ったのは事実らしいですが、
他は全部フィクションです(^^;。



天猿 コメント テンポの良さ、といい、
オチまでの運び方、といい。

非常に完成度が高く、誰が読んでも楽しめる作品かと。
お見事です!