三国劇場 |
金の斧 銀の斧 | |
作: 天猿 |
呉の孫権は、大変な酒好きで、
おまけに最悪の酒乱であったという。
この日も、湖に船を浮かべて大宴会に興じていた。
……迷惑顔の家臣達を尻目に……
うははははっ。 飲むぞ飲むぞ飲むぞ飲むぞ飲むぞ飲むぞぉ♪ 酒、酒、酒、酒、酒、酒、酒ぇッ!! うっきょぉ〜〜♪(泥酔) |
……………………。 |
……うう……。 ( わが殿の酒癖の悪さには、困ったものだ ) |
今日は皆で大いに飲み、 船から落っこちるまで飲むのだぁああッ!(酔) |
いい加減に、しなされ! 我が殿!! |
( ナイス! さすがは張昭殿だ ) |
やい、ジジイッ! 皆と楽しんでいるだけなのに、 何に腹を立ててるんだよッ!?(酔) |
贅沢で遊び好きの王様の為に滅びてしまった、殷という国をご存じですか? その王様も、お酒が大好きでした。 酒粕の丘と酒の池を作り、連日連夜の酒宴を開いていたそうです。 |
……しかし、その王様も国が滅びるまでは、 その乱痴気騒ぎを、楽しみのためだと考え、悪事をしているとは 思っていなかったのでしょう。 |
おわかりですか? 一国の王たるもの、自分を律するということを 知らねばならないのですぞッ!! |
( さすがは張昭殿だ。 普段は口うるさくても、こういう時は頼りになるなぁッ! ) |
………………………。 |
ふふ。 どうやら、酔いが覚めたようですね?(笑) |
……ウィ〜〜……、……ヒック……? (酔) ……………わからん……。 ジジイ、おまえがいったい何を言っとるのか、全然わからんッ!! |
……う。 ( あ、あれ? 筋書きでは、ここで孫権様が 反省して、めでたしめでたし、のハズなのだが……) |
( こ、ここまで酔っぱらっているとは!? …どーやら話が違ってきているようだ ) |
口うるさいジジイめ!! 喰らえ!! ギャラクティカ・マグナム・孫権ばんち!!(酔) |
……ぐッ、 ぐははぁ〜〜ッ!? |
…………ッ!? |
ふふふ。これは傑作よの。 最初に、湖へと落っこちるのが あやつだったとはのう! |
なんぴとたりとも、 俺の酒の邪魔をすることは許さぬのだぁ♪(酔) |
しゃ、洒落になってませんぞ、殿! |
……うーむ……。 暴れたら、眠くなってきた……。 おやすみなさぁ〜〜〜い♪(酔) |
ちょ、ちょっとッ……! (怒) |
ぐぅ〜〜〜、ぐぅ〜〜〜〜。(眠) |
ね、寝ちまった。 ……まぁ、いいか。 起こして、また暴れ回られても困るしな……。 |
……あ、あの。 張昭殿、沈んだきり浮かんでこないのですが……。 |
あッ!? ……そ、そう言えば……! |
ひぃいいいいッ!? ちょ、張昭殿〜〜〜ッ!!(泣) |
お嘆きになることはありませんわ♪ 働き者の木こり……もとい、武将の皆さん。 |
……う? あなたはいったい……!? |
うふふ。 私は、水の女神 『洛神』。 |
この泉に住む『泉の精』と 説明すれば、いいかしら。(笑) あなた方の嘆く声を 哀れに思い、現れたのですわ♪ |
気のせいでしょうか? 魏の甄姫殿に、とっても似ているような……。 |
……そもそも。 ここは、泉というより湖なのじゃが……。 |
……おだまり。(怒) |
ひぃッ。 |
……あ、あの。 泉の精霊、ということは。 ひょっとして、落とし物を返してくれたりする、アレですか? |
ええ。 ようやく、本題に入れそうね。(笑) あなた方が落としたのは……。 |
どきどき。 |
あなた方が落としたのは、この金の張昭ですか? |
それとも、この銀の張昭ですか? |
あるいは、この古ぼけた普通の張昭ですか? |
え、えーと……。 |
ひとつ、参考までに質問して よろしいでしょうか? 金の張昭、銀の張昭とは、どのような張昭なのですか? |
いい質問ね。書いて字のごとく、 純金製の張昭と、純銀製の張昭よ。 口やかましくない、とても静かな張昭ですわ♪ |
……普通の張昭は? |
普通の張昭は、普通の張昭に決まってますわ。 口やかましくて、頑固で、主君と喧嘩ばっかりする張昭です♪ |
うーむ。 やっぱりそぉですか……。 |
ひそひそ。 ( どうします?) |
ひそひそ。 ( やはり、ここは正直に答えるのが一番であろう ) |
ひそひそ。 ( うむ。金の張昭、銀の張昭も魅力的ではあるが…… ) |
こくり。 ( 孫権様の暴走を止めてくれるのは、普通の張昭だからな ) |
お決まりのようですね。 |
はい。 我々が落としたのは、古ぼけた普通の張昭です。 |
金の張昭・銀の張昭のような、立派な張昭ではありません。 |
口やかましい頑固老人の、張昭なのです。 |
どうか、私たちに張昭を返して下さい。 |
なんと正直な、武将達なのでしょう。 とっても、感動しましたわ♪ |
いえいえ。(笑) |
ご褒美として、金の張昭・銀の張昭を、与えましょう。 |
へ? |
では、ごきげんよう♪ |
え、えーと? |
……あ! そう言えば、あの話って……。 |
……し、しまった……。 そんなオチだったかのぅ? |
ど、どーする? |
……う、うーむ……。 ( どおする、って言われてもなぁ……) |
……うん? なんだ、この悪趣味な張昭の像は? |
え? お、覚えていないのですか? 昨日、自分が湖に突き落としたんじゃないっすか。 |
はぁ? わけのわからんことを……。 どうやったら人間が湖に落ちて、金と銀になるのか? |
そ、それは……。 |
……まぁ、いい。 |
こっちの張昭の方が、 口うるさくない分、まだマシだしな。(笑) |
(ひど……) |
……それにしても。 見れば見るほど、悪趣味な彫像よ。 |
うむ、決めたぞ! この彫像を肴(さかな)にして、 今日も皆で大宴会だ!!(笑) |
うう……。 ちょ、張昭どのぉ〜〜。(泣) ( やはり、我々には貴方が必要ですぅ…… ) |
宮中では、皆が私を尊敬してくれるが。 宮中から一歩 外に出ると、皆 張昭の方を敬っておる。 これではやりにくくて、仕方がないぞ! |