三国劇場
内助の功(後編) 原作: ゲスト 様
文章: 天猿


【 前編のあらすじ 】

建興九年(西暦231年)、
諸葛亮による第四次北伐。

その、出立前。

諸葛亮は、過去三度における撤退の苦い経験から、
兵糧不足の問題をいかに解決すべきか、苦悩していた。

……そんな諸葛亮に、彼の妻 月英は秘策を捧げ……


孔明 さて……。

ようやく、成都と漢中を結ぶ、蜀道にさしかかりましたか。

孔明 ここからが、本番です。
岸壁にかろうじて沿って続く、命がけの細道。

険阻なるは、剣閣の地。まさに、難道の極み。

孔明 しかし、蜀と魏をさえぎる、この山脈を越えずして、
北伐の成功はありません。

はたして、月英の発明品である『木牛』は、役に立つのでしょうか?



……ウィン……ウィン……ウィン……


木牛 木牛 木牛 木牛 木牛

……ウィン……ウィン……ウィン……



孔明 おお!?


木牛 ……カタン……カタン……カタン……。

木牛 ……カタ カタ カタ カタ……。




孔明 思いのほか、スムーズな動きです。

それに……。

木牛 木牛 木牛 ……カタッ ゴトッ カタッ ゴトッ カタッ ……。

孔明 意思のない機械だからこそ、命がけの悪路であろうと
恐れることなく進むことができるというわけですね。

なるほど、機械と言えど あなどれません。(笑)



孔明 さすがは、わが妻 月英です♪

木牛 木牛 木牛 ……カタッ ゴトッ カタッ ゴトッ カタッ ……。


孔明 ふむ。どうやら調子もいいようですし。

孔明 ひと安心したら、眠くなってきましたね。

……ここは、少しだけ仮眠を取ることにしましょう♪






……半時ほど、経過……



魏延 おいッ! 軍師殿!!

お、起きろぉ〜〜〜ッ!!

孔明 ……む、……ムニャ……。
な、なんですか……魏延……!?

私の貴重な睡眠時間を、邪魔しないでください!!

魏延 こ、この!!

とにかく、目を開けてくれ!!

寝ていなくとも
悪夢は見れることを教えてやる!!




孔明 ……へ?

魏延 アンタが持ってきたガラクタが、

とんでもないことになっているんだよッ!!

孔明 ……!!??




木牛 ……ピーガガガガガガッ、ピーガーッ、ピィーーッ!!……。

木牛 ……ガタンッゴトンッガタンッ…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……。

木牛 木牛 木牛 ……ド ゴ ンッ、 ド ゴ ンッ、 ド ゴ ンッ 、 ド ゴ ンッ……。




孔明 ひぃいいいいいい!?

も、木牛が逆走しているぅううう〜〜〜ッ!?

魏延 軍師殿、なんとかしてくれッ!!

孔明 そ、そんなコト言われても……。

あ……ああッ!!??




魏延 しょ、兵糧が…物資が…ッ!?

孔明 次々と、谷の底へ……。(泣)





木牛 木牛 木牛 ……ゲッヘッ、 ゲッヘッ、 ゲッヘッ 、 ゴガガガガッ……。


魏延 オイ……?

こっちに向かってきてねぇか?

孔明 はい……。

凄まじい勢いで……。
兵士達まで、巻き込みながら……。




木牛 木牛 木牛 木牛 木牛 ……ドドドドドドドドドドドドドドッ……。(爆走)

孔明 魏延 うわぁああああああああああああッ!?(泣)







……かくして、木牛の暴走により。

諸葛亮の第四次北伐は、頓挫することとなった……


後日、諸葛亮は成都に帰還し……。




孔明 ただいま……。

月英 お帰りなさい、アナタ♪

あら、どーかされました? その傷は……。




孔明 ど、どーしたもこーしたも、ありませんよッ……。

なんですか、あのトンデモナイ発明品はッ!?
もう少しで、殺されるトコロでしたよッ!!!

月英 ……まぁ、落ち着いて。

いったい、何があったのか、しっかりと説明してくださいな。



孔明 狭い山道で、いきなり逆走するわッ!

逃げようとしたら、追いかけてくるわッ!!

月英 まぁ!?

孔明 谷底に落ちて死んだ兵士は数知れず! 

大惨事でしたよ!!




月英 ……うーん……。ひょっとして……。

兵士の誰かが、木牛のスイッチである舌を
マニュアル以外の方法で、ひねったのかしら?

孔明 ……へ!?



月英 左に二回以上回すと、

「自滅モード」

月英 右に三回以上回すと、

「追跡モード」

月英 ちなみに。……リセットボタンを押さずに、
複数の操作をすると、完全にバグるのよね。

各機が連動して、まったく予測不可能な行動を起こすから、
注意しないと……。




孔明 ……あの……。

舌がスイッチになっている、って一言も説明ありませんでしたが?

月英 あらぁ〜……。そ、そうだっけ……?

ごめんなさい、ついウッカリしてたわ。



孔明 …………。(怒)

月英 てへ♪




孔明 ……………………。

( てへ♪ …じゃ、ないでしょうが。この破壊的迷惑女ッ!!)




月英 ……まぁ、こんなこともあろーかと♪

木牛のストックは、大量に生産しておいたから。



……ウィン……ウィン……ウィン……

木牛 木牛 木牛 木牛 木牛

木牛 木牛 木牛 木牛 木牛

……ウィン……ウィン……ウィン……



孔明 ( ひぃいいいいいいいいいいい!!)

月英 今度は、上手に使って、キッチリと北伐を成功させてね?

あ・な・た♪





その後。

諸葛亮は、再度の挑戦として、第五次北伐に挑む。

世に言う五丈原の戦いである。


しかし、無念にも陣没し、

ついに成都に戻ることはなかった。


なお、

孔明 魏を倒すまでは、成都に帰還するつもりはありません。

それが、私の覚悟です。


……と、いう彼の決意には、

何か別の事情があったのかもしれないが。

……そのことについて史書には詳しく記されてはいない……。





天猿 コメント: …三國志演義では、木牛作戦は大成功しています。

念のため。