三国劇場
内助の功(前編) 原作: ゲスト様
文章: 天猿




建興九年(西暦231年)、

諸葛亮は四度目の魏領侵攻を計画。

世に言う第四次北伐である。


しかし。

この作戦を実行に移すにあたっては。

……事前に解決しなければならない問題があったのである……


孔明 はぁ……。

月英 あら?
アナタったら、またタメ息なんて ついちゃって……。

私でよければ、相談にのりますわよ?


孔明 ……いえ、お気持ちだけいただいておきましょう。

これは、国家に関わる問題ですから。(苦笑)

月英 ふふ……。

妻である私に対しては、
そのように気遣いされることはありませんわ。

なんなら、孔明様のお悩みのところを
当ててみましょうか?


孔明 …う。


月英 『 四度目の北伐、その勝算について』

そんな、ところでしょう?



孔明 ……うぅッ!?



月英 クスクスクス♪

アナタのことなら、すべてお見通しだわ。(はぁと)

孔明 はは……。

月英、オマエにはかないませんね。(苦笑)



月英 ……ふふふ。
どうやら、ここは発明を得意とする、私の出番のようですね。

こんなこともあろうかと、かねてから準備していたのよ♪

孔明 ……!!



月英 ご覧になって! わが最高傑作!!

孔明 おお!? (わくわく)




月英
カモン! 『木牛』!!


……ウィン……ウィン……ウィン……


木牛 木牛 木牛 木牛 木牛



孔明 ううううッ!?

月英 うふふ。




木牛 木牛 木牛 木牛 木牛


孔明 なんと、まがまがしい……。

これは、いかなる殺戮兵器なのですか?



月英 もぅ、アナタったら♪

冗談がお上手ね。

木牛 木牛 木牛 木牛 木牛

月英 こんなキュートなフォルムをした
殺戮兵器があるわけがないでしょう?

これは、輸送機械ですわ。



孔明 ……きゅ、きゅーと……?

( わが妻ながら、なんたる美的センス )




月英 ……孔明様。

過去、三度の北伐において
幾度も撤退せざるをえなかった一番の原因は、
兵糧不足の問題と聞いております。

月英 この蜀の地は、幾重もの山脈に囲まれた天然の要害。

しかし、我々から攻めるにあたっては、それが災いとなるようですね。
山中の行軍・補給の確保は至難のわざですから。

月英 本来、輸送手段のカナメとなるのは、馬や牛ですが。

山中では、その飼料が、絶対的に不足しているのです。




孔明 え、ええ……。

おっしゃる通りなんですけど……。




月英 しかし!

もう、ご安心くださいませ♪

月英 この才色兼備の、スーパーレディ 月英が!
三国一の超絶美人にして、頭脳は創造神の領域にあるワタクシが!!

アナタの悩みを完全解決!!!




孔明 …………。

( オイ?)




月英 わが発明、『木牛』を使えば、

補給の問題など、瞬時にしてノープロブレム!!

月英 動力は、内部機械による完全自動システム!!

飼い葉だの、飼料だの、そのよーなモノは一切 必要としません!!

月英 まさに、この発明こそ、究極の『内助の功』と言えましょう!!!



孔明 …………。

( うわー)



月英 さぁ、孔明サマ♪

この空前絶後の発明の恩恵に授かり、
とっとと魏の兵士をブチ殺してきなさい!!

月英 まずは、悪の帝国 曹魏を、完全に滅亡させてしまうのです!

その先にあるのは、孫呉の併呑!! 天下統一!!!

月英 そして、漢王室復興の悲願成就!! 

その偉業を達成した時こそ!!
孔明サマの名は、歴史に不朽の輝きをもって刻まれるでしょう♪

月英 そして、孔明サマを支えた貴婦人として、

ワタクシもまた、世の婦女子から
未来永劫に賞賛され続けるのですワ!!!




孔明 …………。



月英 オーホホホホホホホホホホホホッ!

いやぁ〜〜〜ん、最高!! 
ワタクシったらステキすぎぃ〜〜ぃ♪♪

孔明 あ、あのぉー。

げ、月英さん?

月英 は!?



孔明 ……よ、よーするに。

この木牛、という機械を使えば。
輸送の問題は、解決されるのですね?

月英 い、いやだわ、私ったら♪

ちょっぴり、取り乱しちゃったみたい……。



孔明 ……いえいえ。

私のために、そのような発明をしていただけるとは。
まったく、アナタは私には過ぎた妻ですとも。(笑)

月英 い、いやだわ、アナタったら♪

孔明サマに、微力ながら
お役に立てれば、本望ですとも。(笑)





孔明 では、月英。

そろそろ、出立の時間。行って参ります。

( ふぅ……。ようやく解放されますね……)

月英 はい。マイダーリン♪

遠征の間は、その子達(木牛)を、
私だと思って可愛がってね♪



木牛 木牛 木牛 木牛 木牛




孔明 …………。

( あらゆる意味で、そりゃ無理です)





そんなこんなで。

とにもかくも、兵糧の輸送手段は確保できた諸葛亮であったが。


果たして、彼の妻 月英の発明は、本当に役に立つのであろうか?

後編に続く!!






天猿 コメント: ……いただいた作品では、月英は
こんなヘンな女ではなかったのですが。

ついつい、ノリでやってしまいました。