三国劇場 |
天下独り占めの計 | 作品提供 :桃丸 様 |
アレンジ : 天猿 |
頭のいい人物とは、凡人には遠く及ばないような
国をも動かすスケールの大きい計画を考えるらしい。
しかし、ただ頭がよいからといって
手放しに褒めることができるか、といえばそうでもない。
主君を立てる忠義も少なからず必要である。
魏・呉・蜀の智謀の士たちは、果していい見本になるのかどうか?
……と、いうワケで。 本日は我ら三人が 一堂に会し、それぞれが抱える 智謀の士について語り合う事になったのだが……。 |
しょっぱなから、 異常にテンションが高くなっちゃってる人が、 約一名。 |
ねぇねぇ、ねぇ! まずは、俺から! 俺から話しちゃっていいかなぁッ♪ |
……ふぅ。 どうぞ、遠慮なく。 |
俺んとこの諸葛亮はな、頭もいいし、忠義の心も厚い。 まさしく最高の奴だぜ!! |
今、勢いが盛んなのは北の曹操、江東の孫権。 この二つの勢力と直接あたる事を避け、 隙を見て荊州を盗り劉備殿の基盤を作るのです。 |
「盗り」って…… 天下を三つに分けるということか。 |
そうです。 二つなれば互いに戦いあうしかありませんが、 三つならば一方と同盟を組んで他方に攻め込むこともできますし、 他の二勢力がいがみ合っている最中漁夫の利を狙うこともできます。 天下を三分こ………これを、天下三分の計というのです。 |
おお!!なるほど!! なんだか、天下がとれるような気がしてきたなあ! |
どうだ? 俺んとこの諸葛亮は?? |
……むぅ。 聞いているうちに、 私も熱が入ってきたようだ。 これは負けてはいられませんな。(笑) |
いや、なんのなんの!! 私のところの周瑜も、 貴方の諸葛亮以上に素晴らしい人ですぞ! |
孫権様。 ただいま曹操は大敗を期し、 我々とすぐに戦えるような状況ではございません。 |
ふむふむ。 |
曹操が兵を動かせない今、 我々は蜀の地に……、 すなわち益州へと目を向けるべきです。 |
ほう。 |
聞けば益州の劉璋は、暗愚なる人物。 さらに、たびたび漢中の張魯の侵攻にさらされているとか。 つけいる隙など、いくらでもありましょう。(笑) |
まずはこれを倒し、 蜀の地を手に入れます。 |
なるほど、な。 それで? |
勢いで張魯を攻め、漢中も手に入れます。 そうすれば、西涼の馬超との同盟も苦ではないでしょう。 ここにおいて 北の曹操に当たるための一大勢力が出来るわけです。 |
これすなわち、 天下を半分こする 『天下二分の計』! ………いかがでしょうか? |
おお、素晴らしいな!!! 早速やってみようと思うが、劉備はどうするのだ? |
あれは、梟雄の資質があります。 関羽や張飛などの名将もいることですし、 いつまでも人に屈服しているような人物ではございません。 我々が野放しにしてしまったら、 やがて蛟竜雲雨を得るように、雄飛の時を得るでしょう。 このまま、池の中で大人しくしている者ではありません。 |
ならば。 いっそ劉備には御殿や美女を与え、 呉の地に留まらせてはいかがでしょうか? 本人にとっては、竜宮城。 しかし、真実は池の中。 ……安楽な夢を与え、惰眠をむさぼらせておけばいいのです。(笑) |
そうやって、 劉備をていのいい人質とした上で。 関羽や張飛は我々の駒としてこき使ってやれば よろしいかと。 |
……そうか。 では考えておこう。 (劉備達が、そんなおとなしいタマならいいんだけどなぁ…) |
どうです? いきなり二分にしちゃってるところが 諸葛亮よりいささかスケールが大きい、っていうかぁ♪ |
なっ………! だってあの当時の俺には 拠って立つ土地もなかったんだぜ!!(怒) |
所詮は弱小勢力の悲しみ、でしょうかぁ〜? |
ムカ。(怒) ……ま、まあ、いいけどね。 あいつのおかげでこうして「蜀」も手に入れられたし〜。 誰かさんが考えた、 孫呉の天下二分の計、はどこへやら、だしぃ〜♪ |
あ、あれはあの後、すぐ周瑜が死んじゃったから……。 ちゃんと周瑜の言葉に従って貴方をマークしていればなぁ、 こんな事には……。 |
ね、曹操殿! ………って、あれ? |
いつのまにやら、 席をはずしておりますな。 ……どこへ行ってしまったのやら? |
どうせ怖くなって逃げ出したんだろ。 はっはっは! |
やれやれ。 ヒマ人の話にはつきあってはおれんわい。 |
くだらぬ夢ばかり見おってからに……。 しょせんは、画餅。 絵に描いた餅にすぎぬではないか! |
たわいのない夢物語に うつつをぬかす暇があったら、 兵法書や経典のひとつにでも 目を通してはどうか、と言いたい。 まったくもって、度し難いやつらよ。 |
……ふ。 まぁ、いい。 |
結局、あいつらがいくら自慢をしようと、 最後に天下をとるのはこの曹孟徳なのだ。 司馬懿も、いささか扱いに難しいところはあるが、 今のところは、うまくやってくれているし……、な。 |
さあて、ここらで 気持ちを取り直して。 今日も心地よい眠りにつくとしようか♪ |
えーと、確か昨夜の夢では、 大喬ちゃんだったから……。 |
順番からいっても。 公平を期しても。 ……今宵は、小喬ちゃんで決まり、であろう。 |
シチュエーションとしては…… 『 お花畑で遊ぶ 』 がいいな。 海辺で追いかけっこ、も悪くないが 小喬ちゃんにはメルヘン路線の方が 喜んでもらえる、と判断する。 |
……ふふ……。 完璧だ。完璧なるシナリオよ。 この曹孟徳、眠りにつくにあたっても 妥協はせぬぞ! |
では! いざ参らん、夢の世界へ♪ ヒャッホー!! |
……あれ? ここはどこだ??? |
おかしい。 今日は小喬ちゃんとお花畑で遊ぶ予定だったのに…… 花一本見えないではないか!(怒) |
……っと、待て。 アレは何だ!!?? |
……馬だ。 三頭の馬が、ひとつの 飼い葉桶に首を突っ込んで、餌をむさぼっておる。 |
飼い葉桶を、 一文字で書けば、『 槽 』 。 |
槽は、そのまま曹に通ず。 これすなわち、あの飼い葉桶は 我ら曹一族の比喩表現であったりして……。 |
あの三頭の馬は、 姓に「馬」の文字が入る 一族を意味していたり、するのか? |
…… なぁんちゃって 〜〜。(笑) |
……。 …………。 ……………………。 |
き、気分悪ッ!!!? |
うわー、イヤだイヤだ。 気分わっるー。 |
あんな、なんでもない光景に、 なんだって縁起悪いったらありゃしない イメージを感じ取っているのだ、ワシ? |
忘れろ、忘れるのだッ! いっそ見なかったことにしろッ!! |
……うぅ、しかし。 |
あの、三頭の馬の真ん中のヤツ。 陰気で、神経質そうで、 見た目からして、じじむさくって 気にくわない、あの馬……。 |
どこかの誰か、に似ているような……? |
なんだか、とっても 気になって仕方ないぞぉー!!(涙) |
全く……。昨日は散々だった。 小喬には会えないし、 極めつけはあの不気味な夢! むう……気分がすぐれん |
おはようございます。 |
!!?? |
あれ? どうかなさったのですか曹操様。 |
ご気分でもすぐれないのでしょうか? お顔の色が悪いようですが。 |
……いや。その、なんだ。 ふと、つまらない事が頭に よぎっただけだ。 |
……ふむ? つまらぬ事、ならば よろしいのですが。 |
うむ。(苦笑) 本当に、つまらない事なのだ。 |
昨夜、見た夢の中に出てきた馬。 ワシの知っておる誰かに似ているような……、 などと気になっていたのだが。 |
司馬懿よ、オマエだったのだな。 |
ははは。(苦笑) それはいったい、 どのような馬だったのですか? |
うむ。 陰気で、神経質そうで、 見た目からして、じじむさい……。 |
それはそれは 誰からも好かれそうもない感じの 馬であった。(笑) |
……………………。 |
む、どうしたのだ、司馬懿よ。 気分でもすぐれないのか? 顔色が悪いぞ? |
……しばしの間。 トイレに行ってきても、 よろしいでしょうか? |
ふむ。 それは、かまわんが……。 腹具合でも悪いのか? |
いえ。ご心配なく。 少しだけ、泣いてくるだけですから……。 |
!!?? な、泣いてくるって……。おい? |
わかってます。わかっているのです。 自分が、陰気で、神経質そうで、 じじむさくて、誰からも好かれそうにない、 そーゆー日陰者だって事くらいは。(涙) |
でも、私はタンポポの花のように。 陽の当たらない場所でも 一生懸命、咲こうとする、タンポポのような者でありたい!(涙) |
ご、ごめん。 |
うぅ……。 ひっく……ひっく……。(泣) |
行っていいぞ? トイレ。 |
で、では……。 ……お言葉に甘えまして……。 |
……行ってしまった……。 |
悪いことしたなぁ。 事実を直接 本人に告げるというのは、 時として凄く残酷なことなのだなぁ。 |
……ま、いっか。 明日には、立ち直っているだろ。 |
それにしても。 言うにことかいて、タンポポとは。(苦笑) |
そのような者が、 わが一族をおびやかすことなど とうてい、あるまいに。 |
まったく、ワシもどうかしておったわ! はははははははは!! |
作者様 コメント: |
初めて作りましたが、難しいですね。 個性的な智将達の壮大な策を集めてみました。 後漢末の、郡雄割拠時代は、皆奥ゆかしいですね。 みなそれぞれ野心丸見えですが……… |
天猿 コメント: | 一般には、諸葛亮の 『天下三分の計』 が高く評価されていますが 個人的には、周瑜の 『天下二分の計』 の方が好みですね。 ……完成度うんぬんではなくて、そのギャンブル性が。(苦笑) はっきりいって、めちゃくちゃハイリスクなんですよね。 当時の呉の国力を考えれば、もう背伸びしすぎって感じで……。 「うまく一気包囲できればいいけど、 各個撃破されたら、シャレになりませーん。 つーか、どう考えても分が悪すぎるでしょーに」 みたいな策に思えて、仕方ありません。 ……ですが、それでもなお。 『天下二分の計』の壮大なスケールには 魅力を感じるのですよね。 成功するにせよ、失敗するにせよ、 歴史は大きく動いていたでしょうから。 おそらくは、官渡大戦クラスの、 戦史に残る一大決戦が展開されたのではないでしょうか。 |