三国劇場 |
演義の宿命 | 作品提供 : B29 様 |
アレンジ : 天猿 |
張遼。
字(あざな)を文遠。
おい、張遼。 |
はい、何でしょうか? |
オマエ 五将軍から降格。 |
なな!? 一体どうしてなのですか! |
だって管亥が部下になったもん。 管亥はお前より圧倒的に強いしな。 |
は? |
管亥?? |
……すいません。 聞いたこともない名前です。 誰ですかソレ? |
…………。 |
えーと。 ……とにかく、ですね。 |
その管亥とかいう…… 『よっぽどのマニアでもない限り 知らないようなマイナー武将』 と、この張遼を本気で差し替えるおつもりですか? |
なにとぞ お考えなおしください。 |
……ふぅ。(ため息) 往生際の悪いやっちゃなー。 |
な!? |
私が徹底した能力主義者であることは、 オマエもよくわかっておろうに。 |
張遼。 お前さぁ、一騎打ちでは 文醜なんかと互角だったんだぞ。 『 関羽に一撃でやられた文醜 』 なんかと、な。 |
そんなお前より 『 関羽と何十合とわたり合った管亥 』 の方が、五将軍の資格があると思わぬか? |
んん〜〜〜〜?(笑) |
……っぐ!? |
だからお前、降格な。 |
ま、待った。 ちょっと待ってください、曹操様。 |
なんだ、まだ諦めがつかんのか。 |
いや、仮にですね。 百万歩譲って、その管亥とやらが 私に勝る武勇の持ち主であった、としてもですね……。 |
私だって、そう捨てたモノじゃないでしょ。 |
先日、合肥の地にて。 孫権が率いる十万もの軍勢を相手に 一歩も引かず奮戦し、そのうえ 孫権を討ち取る寸前まで追いつめた事を。 ……お忘れになったわけでは、ありますまい? |
……あー。ハイハイ。 そーゆー事も、あったよねー。 |
……な!? 「そーゆー事も、あったよねー」 って、あんた……。 |
でも、討ち取れなかったじゃない。結局。 |
うぅっ!? |
物事は結果が全て。 大切なのは過程じゃないのねー。 プロセス イズ ノーバリュー。 |
ぐぅうう〜〜〜っ。 |
悔しかったらさぁ。 もう一度、孫権とやりあって 首のひとつでも取ってこいや。 |
……あのー……。 簡単に言ってくれますけど、ね。 私、呉の連中からは さすがに警戒されちゃってるんですよね。 会った事もない子供達から、泣かれるくらいに。 |
孫権が無理なら、劉備でもかまわん。 |
……むぅ。 |
まぁ、それならいいでしょう。 |
……いや、むしろ。 望むところ、といったものですかな。 |
今の私は、昔日の私ではない。 あの関羽を相手にしたとしても、 遅れをとることはありますまい。 |
……ふふふ。 血が、たぎってまいりました。 |
しかし、わが殿。 ここまで焚きつけてくれた以上、 私が望むだけの十分な軍勢と物資は 用意してくださるのでしょうな? |
はぁ? なに言ってんの、お前? |
先ほど、言ったじゃん。 『お前、降格な』って。 |
今のお前は、五将軍でもなんでもない、 ただの一兵卒なんだぞ? |
………………。 |
い、一兵卒? |
うむ。兵卒は兵卒らしく。 一人で行ってこい、一人で。 |
………………。 |
ふ、ふ、ふ……。 ふふふふふッ。 |
おおー。 これは意外だ。 |
リストラ一歩手前の、 この悲劇的状況において なお不敵に笑えるとは!? |
ふ、ふ、ふ……。ふふふふふッ。 は、は、は、ははははははははッ。 |
よいぞ、張遼。その意気だ。 死中に活を求めるのだ。 がんばれよー。 |
……ふ…、ふっざけるなぁああ〜〜〜ッ!! は、は、半殺しにしたらぁ、てめえーッ!! |
ぐふほぉう! |
痛い痛い痛い! 血が、出てる出てる出てる!! |
前言、撤回! 降格の話、あれ無し!! ……てゆーか、 冗談だってば! ちょっとお前をからかって、 遊びたかっただけなんだってば! |
……悪かった、ワシも調子に乗りすぎた! ふざけすぎてました! 謝る、これこのとーり! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさぁいいい〜〜っ!! |
……って、謝っているのにぃ〜〜!! 下げた頭の上から、容赦なく振り下ろされる鉄拳が 痛くて怖くて、たまりませーんッ!!(涙) |
ゆーるーしーてー!! |
曹操様。 我々に、話があるとか? |
うむ。 まずは、徐晃。 古い話で、すまんが……。 |
官渡の戦いの際、 一騎打ちでは顔良に勝てなかったよな、お前。 |
はぁ。 ……確かに、そういう事もありましたが……。 |
作者様 コメント: | どうも初めての投稿でございます。 でも演義を中心に考えたら、 管亥てものすごいなと思っての投稿です。 正史では太史慈に殺されたと思います。 |
天猿 コメント: | 演義における武将達の 『個人的武勇の序列』って けっこう難しいんですよねー。 確か顔良も一騎打ちでは 凄く優秀な選手だったように記憶しています。 魏の武将をことごとく撃退してますからね。 もちろん、あくまでフィクションなんですけど……。 しかし、これはこれで読んでいて 楽しかったりするんですよねー。 なんといっても一騎打ちは戦場の華、ですから。 |