三国劇場 |
株式会社 『 曹魏 』 | 作品提供 : 富士出月 様 |
アレンジ : 天猿 |
株式会社「曹魏」。
曹操が一代で築き上げたゲーム会社である。
しかし。
最新作のアクションゲーム「夏候兄弟」で大コケしてしまい、
緊急会議が開かれていた。
親愛なる社員諸君。 今日の議題は、先日発表した最新作の一件。 および、今後の当社の展望についてだ。 |
…………。 |
どうした、夏候惇。 |
……何故だ……? 何故コケたんだ!? |
斬新なシステム、涙あり笑いありのストーリー、 爽快なアクション、超リアルなグラフィック。 |
どれをとっても完璧な出来栄えだったのに! |
パワーアップアイテムが『眼球』であるという設定。 やはり、コレがまずかったのでは? |
……っつーか、あれ考えたの夏侯惇殿でしたよね? あなた、いったい何を理由に 「眼球を食べて、能力アップ!」 などという斬新すぎるシステムを考案したのですか? |
ちょっとしたユーモアで。 |
……ほぅ。ユーモア。 ユーモア、ですか。 |
ゲームの中で、眼球を入手するたびに、 挿入される演出ムービー。 |
丸呑みするなら、まだしも……。 クチャクチャ音を立てて、 しかもアップで、眼球を食べてるシーン。 |
……アレを、ユーモアだと言い張ると? |
ふざけてるんですか、あなた? |
うぅ……。し、しかし荀ケ殿。 ネットで「夏候兄弟」と検索すると、 様々なレビューサイトが この作品を扱っているのですぞ。 |
これは、 いわゆる「隠れた名作」という物になるのでは? |
何を寝ぼけた事、 いってやがるですか!? |
ありゃー、全部 糞ゲーレビューのサイトだっつぅの! |
隠れた名作じゃなくて、 黒歴史といわれるものになるんですよッ! |
ひぃっ!? |
ひそひそ。 ( ううむ、ついに荀ケ殿がキレてしまいましたな ) |
ひそひそ。 ( 怖いなぁ。 普段、冷静な人が怒るという事は、 これほどまでに怖いものなのだなぁ ) |
まずは落ち着かれよ、荀ケ殿。 今考えるべきは迷作の事より、社の信用を取り戻す名作の事。 事の軽重を誤ってはなりませぬぞ。 |
うぅ。 |
……そうですな。 程c殿のおっしゃるとおりだ。 取り乱してしまって失礼した。 さて、どうすればいいものか。 |
やはりアクションで大コケしたのだから アクションゲーム以外で勝負したほうが無難でしょうな。 |
いや、ここはあえてもう一度アクションゲームを制作し 先の失敗を帳消しにさせるという手もある。 |
私は夏侯淵殿の意見に賛同する。 今は失敗を取り戻すより赤字を取り戻すほうが先決かと。 |
俺は于禁殿と同じ意見だ。 というより、既に「夏候兄弟2」の構想は用意してある。 新キャラとして「キョッチョー」と言う人型ガードロボットを登場させるのだ。 こいつは牛を引きずる怪力の持ち主で、 主人公が死んだら悲しみのあまり血を吐いたりする。 この吐血シーンこそが、この作品の目玉とも言える。 さて、問題は心を揺さぶるこの場面に いかなるセリフを入れるか、だが……。 |
お前はもうしゃべるな。 さて社長。 夏侯淵殿と于禁殿の案。 確かにどちらとも一理あります。 どうしましょうか。 |
……むぅ。 |
ご決断を。 |
夏侯淵の案を採用する。 次回作はアクション以外の ジャンルで勝負したい。 |
と、言うのもだ。 実は前々から密かに温めていた、私自身の案があるのだ。 世間の流れというものと照らし合わせてみても、 これを世に出すのは今しかないと断言できる。 |
おお!さすがは社長! して、その案とは一体? |
今、 世間はいわゆる「萌え」などといったオタクブーム! これに便乗しない手はない。 |
オタクといえば、恋愛シミュレーションゲームだ。 |
現実世界の女性に相手にされないまま、 次から次へと、恋愛シミュレーションゲームを買い漁り、 仮想世界でのハーレムに耽溺し続ける。 オタクという連中にとって、 恋愛シミュレーションゲームは 生きていくうえで水や空気よりも必要なものなのだ。 |
ふふふ。 ならば、与えてやろうではないか。 |
次回作では、 株式会社 曹魏は初の恋愛シミュレーションゲームを出す! |
!!! |
し、しかし社長。 既に、その手のゲームは市場に大量に出回っております。 いまいちインパクトに欠けるのでは? |
手を出しやすいジャンルではありますが、 それは同業他社にとっても同様。 差別化をはかるのは容易ではありませんぞ。 |
確かに、な。 荀ケらしいもっともな意見よ。 |
しかし、しかしだ。 それら出回っているゲームの肝となる「ヒロイン」を見てみよ。 すべて共通している事がある。 |
「共通していること」? |
似たり寄ったりの ヒロインが多いとは思わぬか? |
……ああっ!! |
気づいたか。 そう! すべて10代。 ピッチピッチの花の10代の高校生ばかりなのだ。 |
「だからどうした?」 などと思わぬように。 ここは、発想の転換こそを求めたい。 |
ヒロインの年齢を20,30代にし、高校生ではなく、若妻に変えてみよ。 そんなヒロインが今のゲーム界にいるか? |
い、いない! |
言われてみれば……。 確かに、思い当たりません。 |
奥様系のキャラは、まずサブキャラ扱い。 攻略対象外であることの方が圧倒的に多い!! |
即答したな。 しかも、なかなかに詳しい。 さては、結構その手のゲームやってるだろ。(ニヤリ) |
……う。 多少は、その。 たしなみとして。(汗) |
ひそひそ。 ( ……やってるんだ…… ) |
ひそひそ。 ( 意外と、寂しい人だったんですね ) |
ここからが重要だ。 |
はいっ!! |
以下に、私の考えた案の全貌を述べる。 |
惚れた女は既に他の男の手に落ちている。 しかし主人公は決して諦めない。 |
恋に狂った主人公は旦那を 地獄の底に突き落としてでもモノにしたい。 |
ふむふむ!! |
つーか、落とすんだけどね。 亭主は、地獄に。 |
亭主の勤務する職場に、悪い噂を流すなど序の口。 取引詐欺で多額の負債を抱えさせるとか。 横領の罪をかぶせるとか。 とにかく、亭主の社会的信用を失わせ、 家庭を崩壊へと追い込むのだ。 |
その上で、主人公は善意の第三者を装い、 不安に揺れる人妻に近づいていく。 裏で手を汚していることなど、おくびにも出さず 救いの手を差し伸べる……。 |
……ふふふ。 いいですねぇ。 実に、スリリングです♪ |
つまり。 これはただの恋愛ゲームではない。 いかに旦那と別れさせるか考える 戦略ゲームの要素も含んだ新恋愛シミュレーションゲームなのだ! |
なお。 メインヒロイン以外にも、攻略対象のキャラクターは何人か 用意する予定だが。 全てのキャラクターが人妻である事。 これは、絶対条件だ。 |
全キャラクターの同時攻略を達成した時こそ、 真のベストエンディング 『人妻ハーレム』 が実現するのだからなっ!! |
ひ、ひとづまはぁれむっ!? ……人妻で、ハーレム……。 素敵すぎます!! |
おぉぉぉぉ!! か、完璧だ。どこにも欠点が無い。素晴らしすぎる! 是非この案で行きましょう! |
よし! |
では今から早速 製作を開始する! 二度の失敗は許されない! 全社員、行動を開始せよ!! |
天猿 コメント: | やっぱ魏の連中にゲームを作らせちゃ ダメですよねー。 曹操が陣頭指揮をとった時点で、 問題作になること確定ですもん。(笑) しかしながら。 ……個人的に、本当に欲しくなってしまいました。 「人妻との恋愛シミュレーションゲーム」 ってやつが。 マジでどっかのメーカーが 制作してくれないかしらー。 |