三国劇場	賢者、智に溺れ自滅するの巻 （番外編）
		作品提供 ： 天猿

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私は曹操。 最近、参謀の荀�ｹとの間が ギクシャクして悩んでいる。

まったく、あの男にも困ったモノだ。 私が、魏公となるコトを おおやけの場で反対しおって……。

私が『国公』の立場を望む理由は ただ野心や権勢欲によるものではないというのに。

漢の臣下の立場から逸脱しない範囲で 一国を率いる当主としての力量を顕示せんがため、なのだ。

それによって、私についてきてくれた家臣達にも 充分な恩賞を与えることができるようになるのだからな…。

どうにも、荀�ｹは名義にこだわりすぎる。 正直、そのあたりの事情を汲んで 融通をきかせてくれても バチは当たらぬと思うのだが。

…………。 ………………。

……やめよう。 政治的見解の食い違いは にわかに解決できるものでもない。

じっくりと、話し合っていくしかないな。

それよりも、だ。 我ら二人の関係が、 感情的な対立に発展しつつあるコトの方が問題である。

荀�ｹは、建国の最大の功臣。 ここは、私の方がある程度 折れてもいいかもしれぬ。

よし、決めたぞ。 あやつに仲直りを申し出るとしよう。

ふふふ。 まずは私の方から 度量の広さを示してやろうというワケだ。（笑）

数刻後。

荀�ｹの屋敷にて。

やぁ、荀�ｹ。 突然で恐縮だが、立ち寄らせてもらったぞ。

これはこれは、我が殿。 いったい、いかなる御用件でしょう？

……いや、なに。（笑） ここしばらく、貴公と私の関係が うまくいっていなかっただろう？

関係修復の意味もこめて。 ひとつ、酒を片手に 詩でも吟じて楽しまないか？

ふむ。 ……しかし、あいにくですが。

詩には、とんと興味がありませぬ。

……う。（汗） では、狩りなんかどーだ？

弓を携えて馬を駆り 鹿やウサギを追うスリルは、たまらないぞ？

……申し訳ありませんが。 それも、遠慮しておきます。

禽獣相手とはいえ、 むやみやたらな 殺生は気がすすみませぬゆえ。

（……つ、つまんねぇ……）

（ 超つまんねー激つまんねー。 　……なんて面白みのない男だッ！）

（ い、いや。しかし。 　ここは、我慢だ。 　コイツが好みそうな、誘い方をするとしよう）

で、では荀�ｹよ。 お忍びで、城下の見回りに行くというのはどうだ？ たまには、そういう体験も悪くないぞ？

……ふむ。 なるほど、それなら お付き合いしてもいいでしょうな。

民草の生活を、じかに知ることも、 為政者には必要なことかもしれませぬ。

（ ……ふぅ。 　まずは、よしとするか。 　どうにか誘いには応じてくれたことだし、な…… ）

とかなんとか。

一悶着ありつつも、

城下へとくり出した、曹操と荀�ｹの一行。



……そんな彼らの目に映ったのは……

ママー。ママー。 見て見てぇ！ お花、摘んできたよぉー。

あら♪ 良かったわねぇ。 本当に素敵な、お花だわ♪

ふっ♪ 微笑ましい光景だな。

確かに♪ 幼子を見守る母親の姿とは 身分の上下を問わず、尊いものですな。（笑）

あげるー。 このお花、ママにあげるー。

あらあら♪ いいの、もらっちゃって？（笑）

うん！ だって、私 ママが大好きだもん！ それにね、ママは私の自慢のママなんだよ♪

クスクス。 どうして？

友達がね、みんな言ってくれるんだ。 私のママは、若くてキレイで羨ましいって。

だからね、 キレイなママには、キレイなお花をあげるの！

もぉう、この子ったら♪ でも、嬉しいわ。 ここは素直に喜んじゃおうかな？（笑） ウフフフ！

いやいや。 思わず、なごんでしまいますな。（笑）

うむ♪

若くて、キレイな お母さんとはイイものだなぁ。（笑）

…………ッ！！？？ い、今 なんと……！？

ん？　いや、 若くてキレイな母親とは、いいものだなぁ、 ……と言っただけだが？

げしッ！！

ふぎゃッ！？

こ、この変態めッ！

あの若奥様にまで 手を出すつもりですかッ！？

ドカッ　バキッ　ボカッ　！！

ち、違う！ そ、そういうつもりでは……！！

ええい、黙りなさいッ！

あの親子を不幸にすることは、 この荀�ｹが許しませんぞッ

彼らを、いったいどうするつもりですかッ！ この悪魔めッ！！

ドカッ　バキッ　ボカッ　！！

やめろ、荀�ｹ！　誤解だッ！ 頼む、落ち着いて聞いてくれッ！！

本当に、アレは さりげない一般論というか……。

……むぅ？？ 一般論、とは？

一般論じゃないかッ！？ 母親が、若くて美人なら それにこしたことないだろーがッ？

…………。

決して、オマエが考えているような よこしまな気持ちで口にした言葉ではないぞッ！

…………。

よしんば、そうであるとしても。

？？

アナタが言ったら、 一般論に聞こえないんですよッ！！

なっ！？

だって、そうじゃないですか？

よそ様の人妻目当てに、戦争を引き起こす 世界史上 まれなる変態。 それこそが、曹操殿の真実……！

！！？？

仮に、先ほどの発言に 変な意図はなかったとしても。 それが、どーだってんですか？

まったくもって、まぎらわしい。 実に、不愉快です。

とにかく、今後は誤解を招くような 軽はずみな発言は控えてください。 いいですねッ？

……うう。（涙）

じゃ、そーいうワケで。 後は適当に見聞してくだされ。 私は、先に帰ってますから。

そ、そんな！？ 荀�ｹよ、それはあまりに つれない言葉だぞ。

しつっこいですねー。 これ以上 変態につきあう趣味はありませぬゆえ。 あしからず。

スタ　スタ　スタ　……

い、行ってしまった……。

…………。

……………………。

や、やってられるかぁああ〜〜〜〜〜ッ！！（怒）

こうして、両者の不和は決定的となり

政治的見解の相違にとどまらず、

キッチリと感情をともなう対立へと、発展したとか。



しかし、あまりにも情けない経緯であり、


せめてもの情けということで、

詳細は史書には記されなかったそうな。

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天猿 コメント：

実はこの話、まんま天猿の実体験を もとに作られていたりします。 皆様に質問。 「若くて美人のお母さんって、いいよなぁ」 そんな、さりげない一般論を口にしただけで、 横にいた人から変態呼ばわりされた経験ってあります？ ……自分はあります。（涙）

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