三国劇場 |
三本の矢 | |
作品提供 : 天猿 |
袁譚、袁熈、袁尚、わが三人の息子達。 および、わが甥の高幹よ。 |
は! |
はは! |
本日、オマエ達を一堂に集めたのは、 袁家の明日を担う者達としての 心構えを説きたかったからだ。 |
同時に、誰が私の後継者としてふさわしいか、 その資質を見極めさせてもらおうかと思っている。 |
……お待ち下さい、袁紹様! |
むぅ? |
私はあくまで貴方の甥にすぎませぬ。 |
後継者は、三人のご子息の中から選ばれますよう。 私は分相応に、親族の一人として 袁家をもりたてていきたく存じます。 |
ふむ。 確かに、そうかもしれぬな。 |
私は、席を外した方がよろしいのでは? |
……いや、席を外すことはない。 高幹よ、おぬしも袁家の一員なのだ。 立会人として、一歩さがって見物してくれ。 |
承知しました。 |
では、気を取り直して話を続けよう。 三人の息子達よ。 |
ははっ。 |
今から、私がだす問題を見事に答えてみせよ。 それに答えられぬようでは、私の後継者たる資格はない。 こころして、かかることだ。 |
……!! して、その問題とは? |
うむ。 ここに、三本の矢がある。 |
一人に一本づつ渡すから、折ってみてくれ。 |
??? |
ん? どうした、オマエ達。 こんな矢も、折れないのか?(笑) |
何を言われますか!(怒) |
ご覧下され。 造作もありません。 |
このようなもの、子供でも折れますぞ。(笑) |
ふふふ。子供でも折れる、か。(笑) ならば、新しい矢を渡すから、 もう一度やってみせて欲しい。 |
ただし。 今度は、三本束ねた状態で挑戦してもらおう。 |
ははは。 一本が三本に増えたところで……。 |
……あ、あれッ!? |
ば、馬鹿な?? |
お、折れぬ。 一本のときは、 あれほど たやすく折れたというのに……。 |
そ、そうか。 そういうことか。 |
一本の矢は簡単に折れても、 三本の矢を合わせればそうもいかぬ。 そして、それは人もまたしかり! |
誰を後継者にしたところで、 兄弟がいがみあえば意味がないのだ。 |
兄弟三人、力を合わせることこそが 何よりも大切なことだと。 袁紹様は、それを伝えたかったのだな……。 |
息子達よ。 答えを見つけることは、できたか? |
はい。 この問いを通じて、 父上のお心を察することができました! |
うむ! わかってくれたか!!(笑) |
どんなに頑張っても、どうにもならんことはある。 |
♪ 物事は、諦めが肝心 ♪ つまり、それを伝えたかったのですね!! |
な!? |
ななッ!? |
馬鹿か、貴様は! 袁熈よ、貴様という男は いったい何を考えておるのだ?(怒) |
そ、そんな!? 私の答えが間違っていると? |
間違っているに決まってるでしょ! ねぇ、父上? |
……う、うむ。(汗) 少なくとも、 袁熈の答えは私を満足させるものではない。 |
で、でも。 いいトコロは突いていたかと……? |
いいや。問題外だ。(怒) |
えぇ〜〜〜〜。(涙) |
……ふっ♪ 袁尚よ。どうやら後継者は 俺達二人から選ばれることになりそうだな。 |
さて、それはどうでしょう? 「三本の矢」の意味を真に理解しているのは 実は私だけなのかも、しれませんよ?(笑) |
ぬかせ、袁尚! よかろう、わが答えを見せてくれるわ!! |
おーい、顔良! 顔良はどこだ!? |
ははッ! 袁譚様! 顔良は、ここに!! |
剣だ、おぬしの剣を貸せ! |
お目が高うございますな。 無銘ですが、業物でございますぞ♪ |
うむ。充分だ。(笑) この剣をもってすれば……。 |
三本の矢など恐るるに足らず!! |
おりゃぁあああああッ!! |
お見事な腕前♪ 真っ二つでござるなッ!! |
げッ!!?? |
げげぇッ!!?? |
父上、これこそが私の答えでございます。 |
♪ 目的の為なら、手段は選ばず ♪ つまり、このことを伝えたかったのですよね? |
え、袁譚……。 オマエというヤツは……。 |
( どぉやったら、あの話が そう伝わるのだろう ) |
ええぃ!! それが袁家の長兄のすることか。 |
見当ハズレも、はなはだしい! |
文醜! 文醜は、いずこにある!! |
ブブブッブ、文醜! ブ、文醜ハ ココニ ゴザルデスダス!! |
ここに、三本の矢がある。 折ってみせよ。 |
ゴルルルルルルッ! フンガァアアアアアアアアッ!! |
おおぅ♪ さすがは 我が陣営でも一、二を争う猛将よの。 見事な剛力であるぞ! |
ウウウウウ、嬉シイ デスダスッ!! モ、モット 褒メル 、 文醜 モット 粉々ニスル ゴザルダスッ!! |
ふふふふ。 もはや、原型すらとどめておらぬなぁ♪ |
……さ、三本の矢が……。(涙) |
(兄弟の絆を示す三本の矢が…… ) |
父上、これこそが私の答えでございます。 |
たとえどのような輩でも、 使いこなして見せることこそ王たる者の資質。 |
♪ 馬鹿とハサミは使いよう ♪ つまり、このことを伝えたかったのですよね? |
……………………………………。 |
( ……もぉ、何も言いたくない…… ) |
でしゃばるな袁尚! 小便くさいガキンチョの分際で! |
オマエごときが、袁家を継ごうなど百年早いわッ!! |
やれやれ。 品のない顔で、品のない言葉を吐く人だ。 |
アナタと私に同じ血が流れているなど……。 考えるだけで、鳥肌が立つ思いですよ。 |
おのれぇッ!! それが袁家の長兄に向かって言う言葉か!? |
見本にならない兄など、 軽蔑の対象でしかありません。 そんなコトもわからないのですか?(笑) |
ちょ、ちょっと……。 二人とも、喧嘩はやめなよぉ〜〜。 |
邪魔だ、どけッ!! |
あうッ!? |
く、くそぉ〜〜。 こうなったら、ここは公平を期して……。 |
顔良よ、オマエは我が兄 袁譚に加勢せよ! |
承知つかまつった! |
文醜よ、オマエは我が弟 袁尚に助勢するのだ!! |
ワカッタ ガスデス! |
おらぁああああああああッ!! |
ウラァアアアアアアアアアアッ!! |
ぐぅッ!? 弟を相手に本気で剣を振るとは……。 兄上、アナタという人は 本当にケダモノ以下ですねぇ! |
くっくっくっ♪ 貴様のコトを弟と思ったことなど、一度もないわ! |
ふふ。文醜よ。本気で参られよ。 貴公と拙者の、どちらが強いか。 前々から、優劣を決めたいと思っていたゆえ♪ |
オオオオ、オモシロイ デス ガス ッ! ♪ 顔良 ヤッツケテ 文醜ガ 一番強イニ ナル ガス ♪ |
よし♪ どうにか、バランスが取れてるようだ。 |
まぁ、喧嘩するほど仲がいい、って言うし。 |
兄弟三人、みな仲良く。 袁家の未来は明るいなぁ♪ |
あはははははははははは! |
………………。 |
………………。 |
高幹よ。 本当に、袁家の未来は 明るいと信じてよいのであろうか? |
いいえ、袁紹様。 真っ暗闇でございます。 |
天猿 コメント: | 『三本の矢』 日本の戦国武将、毛利元就が三人の息子達に 兄弟の絆の大切さを伝えたとされる話です。 けっこう有名な故事ですので、知っている人も多いかと。 袁家の三兄弟とは違い、毛利三兄弟は それぞれ協力しあって、 立派に一族を盛り立てていったそうです。 もっとも毛利家の場合、オヤジの元就が長生きして 目を光らせていたってのもあるんですけどね。 |