三国劇場
新説 三本の矢
作品提供 : 李稚然 様



建安七年。


袁紹


袁紹は志半ばで不帰の旅に出る。




父親の生前は疎まれていた長子袁譚であったが、
この機に巻き返しをはかり
第三子袁尚に対し実力行使を敢行。


両者の対立は、身内同士の戦闘行為にまで発展した。


袁譚 VS 袁尚



また、甥の高幹も袁譚、袁尚と連携を取ることなく、
ただ一人で曹操に立ち向かう。


高幹



各個撃破されてゆく軍。

後継者問題から発展した骨肉の争い。

深まる溝。



「袁家の凋落は、まさにとどまるところを知らず」

といった様相である。



袁熈


── こんな状況を、第二子袁煕は一人憂いていた ──




袁熈 はぁ……。

顕思も顕甫も元才も、まるで協力しあうという事を知らぬ。

袁熈 曹操に打ち勝つためには、
何よりも我等兄弟の結束が必要だというのに。

父上も草葉の陰で嘆いていらっしゃることだろう。

袁熈 ……そうだ。

ここは一つ……。






一計を案じた袁煕は

袁譚、袁尚、高幹の三人を呼び寄せた。



袁熈 顕思、顕甫、元才。

今日は、よく集まってくれたな。



袁譚 ふん。手短に済ませよ。

まったく……顕甫も来ると知っていれば来なかったものを。

袁尚 その台詞。そっくりそのまま返してやるぞ、顕思。

ああ、顕奕。
顕思を何処かにやってくれないか? 馬鹿がうつる。



高幹 ……フ。

袁紹様がお亡くなりになって、まだ日も浅く。
曹操の猛威は、すぐそこまで迫ってきているというのに。

高幹 お互いの足を引っ張り、貶めることにしか頭が回らないとは。

……呆れるほかありませんな。


袁譚 何だと!

袁尚 聞き捨てならんな、元才!




袁熈 あああっ!待て待て!

今日はな……。
皆に見てほしいものがあってな。

袁譚 袁尚 高幹 見せたいもの?




袁熈 うむ。

袁熈 ここに、三本の矢がある。

私が今からこの矢を折るぞ。

袁熈 まずは一本だけを折ってみせるとしよう。

袁譚 袁尚 高幹 ……?



袁熈 いいか、矢も一本では簡単に折れ…。


ググッ


袁熈 折れ……!?


グググッ



袁譚 顕奕?

袁熈 あ、あれ?

おかしいな。簡単に折れ……?




ググググッ



袁尚 なんと非力な……



袁熈 い、いいか!

一本では、簡単に折れ……折れ……
折れるはずなんだけどな!?

袁熈 おかしいな!?

んぎぎぎぎぎ!



ググ…ッ……ググググ…ッ 



袁熈 はぁッ……はぁッ……。

ぜぇッ、ぜぇッ。






袁譚 袁尚 高幹 ………………。(冷たい目線)

袁熈 う。 





袁譚 ……で?

袁尚 結局、何が言いたかったのだ?



袁熈 ひ、一人でも大変なんだから!
自分の事で、精一杯なんだから!!

三人で争うなよぅッ!
あんまり心配かけさせるんじゃないやぁッ!!(涙)



高幹 開き直りましたな。






やはり袁家の滅亡は、まぬがれそうになかったようだ。







作者様 コメント: どうも。天猿様の三本の矢を見て思いつきました。
勝手に続編じみた物を作ってしまい申し訳ありません。(笑)
おかしいところがあれば、天猿様に手直しして頂きたく存じます……



天猿 コメント いやいや、
ほとんど手直しするところはありませんでしたよ。
( 題名は、ちょっと変えさせていただきましたけど )

むしろ、僕の作品よりずっと よくできています。

スッキリまとまっているだけでなく
明るい笑いを提供してくれる作品として、
お手本にしたいくらい。

袁熈の情けなさが、もぉ最高♪

お見事です!!