三国劇場
公孫 無理心中 作品提供 : 孫 様
アレンジ : 天猿



西暦199年

公孫瓚 は易京の城にこもり、袁紹軍と対峙していた。


袁紹軍による包囲は数年に及んでいたが、

公孫瓚 が築いた難攻不落の要塞を前に、決定打をうてない状況にあった。


公孫サン VS 袁紹


ちなみに。

このとき、公孫瓚 自身は城楼中心に築いた高楼で住んでいたという。


身の周りには、
正室・側室や下女をはべらせるだけで、
側近さえも近づけず、

文書や書類は吊りカゴで吊り上げさせて
やり取りしていたとか。


窮地においてなお、身の回りから女性を離さないあたり、

なかなかの女好きであったようで……。





公孫サン うぉぉん、袁紹めぇ! とっとと撤退しろよ!(涙)

こう囲まれちゃ城外にナンパにも行けねぇじゃねぇかぁ!?


侍女 A 侍女 B 侍女 C ひっどぉい。
私達がいるじゃないですかぁ!

プン!プン!(怒 )

公孫サン おぉ、怒らないでくれよ、マイ エンジェル達!

君達は十分可愛いんだぜぇ!



公孫サン だけど俺は欲深い男。
気に入った娘(モノ)は全て手にいれねぇと気がすまねぇのサ!!

悪く思わないでくれよ、ベイベ♪

侍女 A 侍女 B 侍女 C あぁぁん、
伯珪さまったら、欲張りなんだからぁ♪

でも、そんなところも魅力的ぃ♪



公孫サン ふふふふ。

ういヤツらよのぉ♪



ドドドドドドドッ
 (轟音)




公孫サン ……ん?

なにやら外が騒がしいのぉ。



ダン ダン ダン ッ ( 足音 )



正妻 あなた!!


公孫サン うげぇ!!
わが悪妻……、もとい正妻よ!!

なななな、何なのだぁ!!?

正妻 何だとは、何よ!!?

そもそも、悪妻ってどーゆーコト?(怒)

公孫サン ひぃ!!




正妻 まったく、

私という者がありながら、アナタという人は……。


正妻 ……じゃ、なくて。

今は そんなコトよりも大事な話があるのですッ。



正妻 外です!

外を、見てくださな!!

公孫サン そ、そんなに慌てて……。

ど、どうしたと言うのだ、一体?

正妻 いいから、見なさい!!




窓をあけた公孫瓚 の目に映ったのは、

無惨にも倒壊した、櫓(やぐら)の数々。




公孫サン うぉ!!

なんじゃこりゃああああッ!?

正妻 貴方が頼りにしていた、城楼が……。

崩れ去っているでしょう?



公孫サン ひょ、ひょっとして先ほどの轟音は……?

公孫サン し、しかし……。

俺は、1000もの城楼を築いたんだぞ?

公孫サン 兵法では、『 百の城楼は攻略できず』とある。

俺はそれどころじゃない規模で、
難攻不落の要塞を築いたハズなんだッ!




正妻 でも、実際に崩れ去っているじゃないッ!?

公孫サン え、袁紹のヤツ……。

い、いったい何をしやがったんだぁ!?






【 袁紹陣営にて 】



田豊 わが殿。

どうやら、成功した様子ですな。

袁紹 そのようだな。田豊よ。(笑)



袁紹 地中にて坑道を掘り。

敵の城塞の真下にて、それを決壊させる。

袁紹 意図的に起こされた 落盤は。

敵陣営の建築物を
足もとから倒壊させていく……。

田豊 これ すなわち、『 穴攻 』の策。

『墨子』にも記されているように、
古来より城攻めには よく使われてきた方法です。

袁紹 ああ。とりたてて、奇策というわけでもない。

始皇帝の時代より以前から、伝えられている正攻法にすぎん。



田豊 もっとも、これほど大規模な城塞に対し。

これほど大規模な『 穴攻 』 を
実行した例は、そう多くはありませんが、ね。(笑)

袁紹 つまり。

『 徹底的な正攻法 』、というわけだ。(笑)

袁紹 つまらぬ小細工や目論見など、正面から粉砕する。

それこそが、わが信念。
わが陣営の戦い方なり!



顔良 文醜 袁紹様!
今こそ、我らの武勇を示すとき。

出撃の許可を くだされッ!!

袁紹 よかろう。

道は開いた。ゆくがよい。



袁紹 穴蔵に潜んだケダモノを、

私の前に引きずり出してこいッ!

顔良 文醜 おおおおおおおおおおおッ!!






【 城楼中心にて 】



正妻 どうするのよ!?

私こんなところで死にたくないわよ!

公孫サン ……うぅ……。

侍女 A 侍女 B 侍女 C は、伯珪さまぁ……。( 涙 )

公孫サン おいで、愛しのエンジェル達よ。

……そしてお別れだ。( 涙 )

侍女 A 侍女 B 侍女 C え……、えぇッ!?



ギュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!



侍女 A 侍女 B 侍女 C いやぁああああああッ!!



ボキ ボキ ボキ ボキッ!!


公孫サン …………。



公孫瓚の胸に抱かれた側室達は、

公孫瓚の胸の中で絞め殺されてしまったという。



公孫サン さぁ、お前もだ。

我が妻よ……ッ!

正妻 嫌よ!!

私は死にたくありません!!!



公孫サン どこに逃げても、じきに袁紹の兵に捕まるであろう。

そーなる前に。
武家の嫁として潔く死ぬのだ!!

正妻 何が武家の嫁ですか!

正妻 この期に及んで、勝手なコト言わないでくださいな!!

正妻 そもそも、
アナタが本当に私のコトを愛していたのか、

はなはだ疑問ですワ!!

公孫サン そんなコトはない!

私は、オマエのコトを心から愛している!!



公孫サン その証拠に……。

正妻 そ、その証拠に?



公孫サン 誰にもそなたを渡すつもりはない!
まして袁家のヤツらになど!

さぁ、共に死のう!

正妻 ……げッ!?



公孫サン さぁさぁさぁさぁさぁさぁ!!!

来世でも、我ら二人は夫婦となるのだぁ!
ふはははははははははぁッ♪

正妻 来ないでぇぇぇぇェェ!!!!!



ブッスリ



正妻 う ぐッ!?



公孫瓚は奥さんを剣で一突きし、



公孫サン ふふふ。

……マイ エンジェル達は、誰にも渡さないのサ……。



みずからも自害して果てたとか。




まぁ、何はともあれ。

大好きな女性達と共に、
黄泉路へと旅立つことができたのだから。


…… これはこれで、幸福な最期ともいえようか ……




こ、幸福なんかじゃありません!!(泣)

そーよ、そーよ。

ホントの恋も知らないうちに死ぬなんてぇッ!(泣)




そ、そんなぁ!?

つれねぇコト言うなよぉ、エンジェル達ィ……。( 涙 )



♪ ちゃんちゃん ♪





作者様 コメント: 虚構満天に作り変えてしまいました。

実際はどうだったのやら?



天猿 コメント ほんっと、公孫瓚の最期だけは救われないですねぇ。

劇の中では正妻が必死に抵抗してますが、
実際には有無を言わさず道連れにしたのだと思われます。

とは言え、彼が当代きっての戦争家であったのも事実。
正史に残る記録を見る限り、
彼の騎兵指揮能力は、あの呂布にも匹敵するでしょう。

その公孫瓚をして、

「まさに神わざというべきか。
太鼓や角笛の音が地の底から響いたかと思うと、雲梯や衝車が
わが櫓の上にあらわれる。われらは、一日ごとに窮地に陥るのみ」

と言わしめた、袁紹軍の総攻撃。

一般的な認知度は低いのですが、
袁紹もまた極めて高い軍事能力の持ち主だったのです。