三国劇場
激突!長坂橋(後編)
作品提供 : 迦楼羅 様




【 前回のあらすじ 】


建安十三年(208年)、


袁家を滅ぼした曹操は、

次なる標的荊州へ向けて進軍を開始した。


一方、荊州では劉表が病没し、後継となった劉jは曹操に降伏。



劉備

その頃、樊城に駐屯していた劉備は、

後継者争いに敗れた長男劉gと近かったために

曹操襲来の知らせを受けていなかった。


知らせを受けた頃には、もはや曹操は目と鼻の先。

一目散に逃げる劉備。


その行く手に、劉備を慕う民達が集まり、その数は十数万に膨れ上がった。


刻々と迫る曹操軍、いざとなったら民を捨てて逃げる気満々の劉備。

果たして、この戦いの結末やいかに?





[ 襄陽より南に200キロ、長坂にて ]



そっ、曹操軍だ〜! 曹操軍が来たぞ〜!


ド ド ド ドッ ( 騎馬軍団 襲来 )


おおおおおおッ!!



きゃぁああああ! 

お、お母さまぁ〜〜ッ!(泣)

に、逃げろぉおお〜!




趙雲 殿! 

曹操軍が我らの軍勢に追いつき、最後尾の民たちは
蜘蛛の子を散らすように逃げ惑っております。

劉備 えぇ〜! マジ!?

趙雲 マジです。



劉備 ……っど……どうしよう。

……今は、逃げます!(無双3Empires大喬風)

趙雲 ……は、はぁ……?

劉備 張飛〜! 

しんがりは頼んだYO! じゃっ♪


趙雲 ちょ……ちょっと……!

アンタって人はぁ〜〜〜〜ッ!




やっぱり民を捨ててトンズラした劉備。



んで。



長坂橋にて劉備軍のしんがりを務めるは、

ご存知 一騎当千の猛将 張飛。



張飛 はっはっはっは〜! 

この燕人張飛さまがしんがりを務めるからにゃあ、
蟻んこ一匹たりとも通しはしないぜ!



パカラッパカラッ( 曹操軍 襲来 !)



張飛 ふふふっ、性懲りもなく来やがったな雑魚どもめ。



夏侯惇 むっ、橋の前にいるのは誰だ?

夏侯淵 惇兄ぃ、あいつは張飛だ!

張郤 ふむ、たった一騎ですか。無謀ですな。

許楮 でも、すごい殺気を感じるだ〜よ。

張遼 たった一騎というのはおかしい。他に伏兵がいるかもしれんぞ。



張飛 やい! どうした てめぇら! 

俺が燕人張飛だ! 誰でもいいからかかってきやがれ!



バチバチバチバチッ!



夏侯惇 くぅ……ッ。なんちゅーでけぇ声だ。

まだ空気が震えてるぞ。




夏侯淵 耳が痛てぇ……。

張郤 (小声で)おい……。

誰も向かって行かんのか?

張遼 無理を申すな。
今の大喝で兵の士気がガク落ちだ。

それに伏兵でも来られたら、勝てるとは限らんぞ。



許楮 あっ、曹操様が来るぞぉ。


パカラッパカラッ( 曹操 到着 )


曹操 ふむ……、どうしたのだお前達?

たった一騎ごときに何を躊躇っておる。




張飛 おぉ、遂に総大将のお出ましか。

やい、曹操! てめぇこんなヘッポコな部下を持って恥ずかしくないのか? 

張飛 全員足がガクガクじゃねぇか。

小便チビる前に、さっさとお家へ帰ったらどうなんだ?

曹操 夏侯惇 夏侯淵 張遼 張郤 許楮 な……なにぃ〜!



張飛 どうした? 
さっきから彫像みたいに固まりやがって。(笑)

逃げるのか逃げないのかはっきりしやがれ!



バチバチバチバチッ



曹操 くっ……。

万雷のごとき大喝よ。




バキバキッ



張飛 へ?

曹操 夏侯惇 夏侯淵 張遼 張郤 許楮 ん?



バキバキバキバキッ、バギャッ




張飛 げぇ! 橋が壊れた! 

これじゃ帰れないじゃん! 

張飛 やばい……。

兄者〜! 趙雲〜! ヘルプミ〜!


曹操 夏侯惇 夏侯淵 張遼 張郤 許楮 ……ニヤリ。

張飛 ひいっ!?



夏侯淵 さて……敵はたった一騎。

我々は五千騎。どう転んだとしても我々の勝ちだ。

張遼 問題は、この騒音野郎をどう料理するかだが……?

許楮 捕まえるだ〜よ。



張郤 ふふふ……。あれほど、わが軍を口汚く罵倒してくれたのだ。

ただでは、すまさぬ。

張郤 ここは我々の軍門に降らせ、この下品な容貌を改造してくれよう。

張郤 外見が美しくなれば、自然と心も美しくなるであろうからな♪



張飛 やだ! 絶対ヤダ! 死んでもやだ! 

俺はこの顔が気に入ってるもんね〜だ!



夏侯惇 ふはははは。この期におよんで、じたばたするな。(笑)

全軍、この虎ヒゲを捕らえろ〜。


張飛 うぎゃ〜!





その頃、戦場からトンズラした劉備は

張飛が命を賭けて曹操軍の進撃を防いだ甲斐もあり、

無事江陵まで辿り着いて孫呉との同盟を締結した。



一方、曹操軍に捕まった張飛も、なんとか脱出し、自力で生還。

…… しかし ……。



劉備 孔明 関羽 趙雲 うわ!

誰だ、オマエは?

いや、その……。

張郤が言うには、かなり美しくなったそぉなのだが……。



帰ってきても すぐには、

誰にも張飛だと気づいてもらえたなかったとか。



〜FIN〜





作者様 コメント: なんだか主人公がコロコロ代わる奇妙なストーリーになってしまいました。(笑)
それにしても、張飛の大喝って何デシベルぐらい出たんでしょうね。
あっ、それと張飛にイタズラしたのは殆ど張郤;です(笑)



天猿 コメント 史実においては 先に橋を落とし、
対岸にて見得をきった、という説もあります。

よくよく考えると、一人で数千の敵を威圧するのは難しいので、
この説の方が現実的かもしれません。

しかし、後の定軍山の戦いでは、
張郤を、わずか十数騎までに討ち減らして敗走させています。

張飛が並々ならぬ武勇の持ち主であったのは、事実だと言えるでしょう。