三国劇場 |
若き名将 | |
作: 加賀の國の小旋風 様 |
呉蜀間にて、荊州の領有を巡って緊張が高まる中。
関羽による度重なる略奪と挑発を腹に据えかねた呂蒙は、
無名ながらもその才、臥竜に匹敵すると思われる陸遜の起用を考案。
荊州奪取の烽火を今、あげようとしていた。
【 建業・孫権の御前にて 】
殿、関羽の度重なる越権と挑発、 すでに目に余るものがあります。 今こそ、奴らを荊州の地より駆逐すべきときであります! |
しかし、関羽も百戦錬磨の猛将。 下手に手出しすると手を咬まれるどころか 食いちぎられるのがオチだぞ。 |
しかも呂蒙、おまえは奴から警戒されている。 めったな行動は起こせんはずだが。 |
ふっ、ご心配なく。 この子明、すでに手を打ってあります。 |
私に代わり荊州に派遣すべき賢将を見つけ出しておきました。 陸遜!ここへ! |
はっ! |
この陸孫という男は、私がじきじきに見出した俊才! また、殿よりひとつ年下という将来有望な人材ですぞ! |
この若き賢将を奴のもとに送り込みましょう。 しかし、増長あまる関羽のこと。 陸遜を、ただの若輩としてみなし、警戒を怠るでしょう。 |
そこに生まれた隙を、衝くことができれば。 関羽に痛撃を与えることも、できるかもしれません。 |
……つまり。 これは あやつの油断を誘う策なのです。 |
なるほど、な。 おまえの目にかなう男なら間違いあるまい。 |
しかも、この私ですら若造とあなどる関羽のこと。 私よりも年若な者に対しては、なおさらだ。 ……間違いなく、油断するであろうな……。 |
よし、陸遜に全てを任せる! 今すぐ書類と手紙を関羽に送れ! ぬかるなよ、陸遜! |
御意。 必ずや、ご期待に応えてみせましょう。 |
父上、呉の呂蒙の後任を名乗る陸遜という男が 挨拶をしたいと参っておりますが。 |
先日、孫権から送られてきた書類の男か。 よし、会ってみるか。 |
この度は将軍にお目にかかれて光栄の極みにございます。 わたくしの名は陸遜、字を伯言と申す者です。 |
浅学非才な若輩ですが、 将軍と同じ地にて職務を果たすことができ、恐悦至極にございます。 |
……。 |
( おかしい。なんだ、この冷たい視線は? ) |
( 関羽が呂蒙殿から聞いたような男なら、 へりくだれば有頂天になるかと思うのだが ) |
( ……ならば、さらに卑下してみるか……) |
不肖めはなにぶん若いだけに 常識をわきまえていないところがありますが、 その点は何とぞご容赦のほどを。 |
…………。 |
( よし、もう一息だ!) |
( ここは、卑屈な笑みのひとつでも、 浮かべてみせてもよいかもしれぬ。 関羽のプライドをくすぐって、たたみかけるとしよう!) |
まだまだ青い若造ではありますが、将軍とは親交を深めたく……。 |
あは、あはははッ♪ ( ←卑屈な笑み ) |
嘘つき。 |
ふぇっ? |
孫権から送られてきた手紙では、若さみなぎる20代を連想させたが。 おまえが持参した履歴書によると、もう36歳ではないか! |
36ともなれば妻子もいるはずなのに、そんなに卑屈でどうする! |
大体、そのように無理に若さをアピールするようになった時点で、 もはや若者失格なのだ! |
がーん!? わ、若者失格……。 |
真に若い者とは、わしの様に気力みなぎる者をさすのだ! お前のように卑屈で、 「若造」と書いて「若造り」と読むような奴など、若者失格! |
お前と同じ空気を吸うとわしの若さにも翳りがさす! さっさと立ち去れい! |
……そ、そんな。 わたしはもう若くないと……? |
うむ。 そーゆーことだ。 |
み、認めぬ。 そんなこと絶対に認めないぞ! うわあああああああぁぁぁん!!(号泣) |
……おやおや。 泣いて帰っていくのぅ。 関平、笑って見送ってやるとしようか。(笑) |
父上、それは若いと言うより大人気ないというものです……。 |
あの程度で泣き出していくようなヘタレを送ってくるということは。 ……どーやら、呉は荊州を諦めているようだな。(笑) 今に揚州も手中に収めてやるわい。ふはははは♪ |
ぐぅぅ……、許さんぞ関羽! この陸伯言の力を目に焼き付けさせた上で、葬ってくれよう! |
強大な敵にも臆せず当たり、そして打倒する。 ……この挑戦心こそが、私の若さの証明と知るがいい!! |
作者様 コメント: | 某ゲームにより永遠のハイティーンの印象のある陸遜。 しかし、彼がその威を轟かせたのは30代後半だそうです。 若手で売るには少し難しい年齢かもしれませんね |