赤壁の戦いに大勝利した呉陣営。
前線にて活躍した面々も、次々と本陣に凱旋。
そして今。
立役者のひとり、魯粛も帰還し、
意気揚々と孫権の前に現れたのであった。
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魯粛校尉が帰陣されました〜。 |
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おぉ、魯粛が！ それは、わし自ら出迎えねばならんな。 |
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わが殿。 曹操軍を撃ち破り、ただいま戻りました。 |
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うむ、天晴れであった。 こたびの勝利は、貴公の存在によるところが、極めて大きい。 |
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わし自ら、貴公の手をとって馬から迎え降ろしたら、 貴公の功績に十分報いることができるだろうか？ |
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（ なんと！ 主君が臣下の手をとって馬から迎え降ろす、など！？ 普通、ありえぬことじゃ！！） |
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（ 孫権殿が魯粛に敬意を示す、ということか。 ……それにしても、わざわざ多くの将兵達の前で……。 孫権殿も、大胆なことをなさるものだ ） |
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（ ううむ……。 いずれにせよ、臣下にとっては最高の栄誉。 なんとも、魯粛とは果報者であることよ ） |
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いかがであろう？ わが軍師、魯粛殿。（笑） |
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いいえ。 ……まったくもって不足しておりますな。 わが主君、孫権殿。 |
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！？ |
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！？ |
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殿が天下を取り。 天子が賢者を迎えるように、わたしを迎えてくださったとき、はじめて。 わたしの功績に報いたと、言えるでしょうな。 |
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（ なんたる暴言……あきれかえるわいっ！） |
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……はははっ！ |
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（ ！！？？ ） |
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なるほど、そうじゃのう。魯粛の言うとおりじゃ。 我ら孫呉の覇業は、まだまだ始まったばかり。 ……目指すべきは遙かなる高み、ということか。 |
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よかろう。 天下を取って、改めて礼を尽くすとしよう。（笑） |
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しかし、本当によくやってくれた。 感謝しておるぞ、魯粛。 |
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まったくです。 私がいなかったら、 孫権殿もとっくに曹操に降伏していたでしょう。 |
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ホント、まったくもって足りませんなぁ。 ……色々な意味で。（笑） |
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……うぅッ！ （こやつ、ここまで言うか！？） |
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だいたい、張昭のジイサンにいたっては、 はじめ何て言ってましたっけ？ |
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俺の記憶によるとぉ♪ |
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「ここは曹操に屈するしかありません」 とか、言ってたよーな言ってないよーな……。 |
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ろ、魯粛ッ！ き、貴様……！？ （ こ、この狂児めッ！ 何を言い出すんじゃ！？ ） |
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いやいや。 ……やっぱ、記憶違いだよねぇ。（笑） |
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そーゆー敗北主義者で売国奴のよーな発言を。 大元老 張昭サマともあろー お方が、 するわけがないもんなぁ〜ッ♪ |
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くッ……、くぅううううッ！（涙） （ 孫権殿の命だけは救おうと、 必死だったワシの気持ちも知らんと……） |
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あ、そうそう。周瑜殿。 降伏してたら、アンタの奥方も今頃は、 曹操の手込めになっておったでしょうなぁ〜。 |
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……う、うむ。 確かに、危ないトコロであった。 |
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まさに。 主戦論を展開した この魯粛こそ、 周瑜夫妻にとって恩人と呼ぶべき お方♪ |
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……あ、ああ。 そう、言えないこともない…、…かもな。 （ ってか、主に戦ってたの俺なんだけど… ） |
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だろぉ？ だったら、お礼に一晩くらい小喬ちゃんを貸してくれても、 バチは当たりませんぞぉ、周瑜提督閣下♪ わーっはっはっはっはっはっはっ！！ |
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…………ッ！？ （ こ、このゲス野郎 ） |
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ま、自分で言うのもなんだけどさぁ♪ |
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今回の戦いは、すべて俺の読みどおりに進んだしぃ♪ |
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結果は皆様の知るとおり、大勝利じゃん？ |
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これすなわち！ 今回の勝利は、すべて俺のおかげってコトだよな！！ |
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………………！！ （ 体を張ってまで勝利に貢献した、それがしの立場は？） |
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俺以外のヤツらなど、すべて脇役！ いや、それ以下！！ |
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俺の知謀にすがることで、 かろーじて生き長らえている、 哀れで矮小な オマケ的存在なのだぁ♪ |
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ！ （ わ、脇役以下のオマケ！？ ） |
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いや〜、ほーんと。 |
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はじめ降伏を考えてたヤツらの気が知れないなぁ〜。 こんなに楽勝なのによ〜。 |
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実のトコロ、俺なんか、ほとんど働いていないんだぜ？ |
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戦争が始まる お膳立てを整えた後は、 仕事するフリして遊んでいたもんね。（笑） 陣中での、面倒くさい仕事は全部 武官どもに押しつけて……。 |
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……って、あれ？ どしたの、みんな？ 恐い顔して……？ |
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……やりますか？ |
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うむ、こやつがいると、我が軍の風紀が乱れる。 |
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殿、まさか止めたりしないですよね？ |
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当然だ。 ……むしろ、わし自らやるっ！ この不心得者に鉄槌を下さずして、孫呉の天下はない！！ |
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わっ！？ ち、ちょっと、みんな……。 |
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……。 |
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れ、冷静になろう。 |
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…………。 |
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……い、いや〜、今回の戦い、みんなよく頑張ったよね〜。 |
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………………。 |
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ホント、みんなのおかげ。 |
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…………………………。 |
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ぜ、全員の勝利だったね〜。（涙） |
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それに気づくのが、 すこし遅かったようだね〜。（笑） |
烏林にて、燃えさかる業火に焼かれる曹操軍の悲鳴が聞こえるなか。
…… 対岸でも、ひときわ高い悲鳴がひとつ、こだましたという ……
