三国劇場
喰らえ、我が想い ( 後編 )
作: 天猿



【 前回までのあらすじ 】



呉夫人から相談を持ちかけられ、

孫策の短気な性格を直すべく決意した周瑜。



同僚の虞翻からのアドバイスで

『 孫策の短気はカルシウム不足が原因 』

という結論に達し、

いざ孫策のもとへと、心を馳せる。


しかし、いささか気負い過ぎの様相は否定できない。


さてさて、どうなることやら。






孫策 ♪ ふん、ふふ、ふーん ♪



孫策 へへ。

今日は日差しも温かくて、いい天気だ。

孫策 ふふ。(笑)

孫策 こうやって、一人で青い空を見上げていると。

日頃、つまらないコトで腹を立てている
自分が恥ずかしくなってくるぜ。



孫策 考えてみりゃ、

けっこうストレスをため込んでいたのかもな〜。(苦笑)

孫策 オヤジの跡を継いだはいいけど、

色々 うまくいかないコトも多いしさ……。

呉夫人

孫策 しかし、ここ最近 オフクロには

けっこう心配かけていた気もするし。

孫策 いいかげん俺も落ち着いて

今後は、親孝行を心がけるようにしようかな。(笑)




だだだだだだッ



周瑜 伯符ぅうううう〜〜〜〜ッ!!


孫策 う、うわ!?




周瑜 貴様というヤツは!

また一人で、ひょいひょいとほっつき歩きおって!

周瑜 それが一国の君主のすることか!

周瑜 いったい、どこまで

この私に心配をさせれば気が済むのだ!?(怒)




孫策 そ、そう怒るなよぉ〜〜。

俺にだって、一人で
自分と向き合いたくなることがあると言うか、さぁ……。

周瑜 ふざけるな!

オマエに、そんな人並みの感性があってたまるか!!

孫策 ううッ!?




周瑜 無類の戦争好きにして、殺戮の申し子!

血塗られた牙で屍肉をむさぼる、地獄の狂犬!

周瑜 まさに、ケダモノ以下のバケモノ!

それが、オマエではないか!!




孫策 ひ、ひどい言われようだな。(汗)

周瑜 黙れ黙れ黙れ!!(怒)

今日という今日は容赦せん!
オマエの腐った性根、たたき直してくれるッ。




孫策 と、ときに周瑜よ。

さっきから、気になっているのだが……。

周瑜 ふむ?



孫策 オマエが両手に持っている、

バケツいっぱいの生ゴミ。

孫策 それ、いったい何なんだ?




周瑜 な、生ゴミだとぅ!?

失礼な!!



周瑜 私が、呉の城下を駆けずり回って

集めてきた魚の骨だぞ!

周瑜 食堂の残飯や、市場の廃棄物の中から

拾い集めてきた魚の骨だぞ!!

周瑜 それを生ゴミ呼ばわりするとは何事かッ?(怒)



孫策 ( それを生ゴミと呼ばずして、なんと呼ぶのだろう?)



孫策 ……え、えーと。

は、畑の肥料にでもするつもりなのか?

周瑜 はははは。
面白い冗談だなぁ、伯符。

こんないいものを、肥料などに使うわけがないだろう。

孫策 ??

じゃぁ、どーするんだよ。それ?



周瑜 決まっているじゃないか。

オマエに食べさせるつもりだ。

孫策 な、なんだとぉう〜〜〜ッ??



周瑜 なんだ、その反応は?

まさか、イヤと言うつもりではあるまいな?

孫策 イヤに決まっているだろーがッ!

孫策 周瑜、オマエ いったい何考えてやがるッ!?



周瑜 …………。

説明が、必要なのか?

孫策 は、はぁ??



周瑜 私が、オマエのために何かすることに

わざわざ説明が必要なのか?

孫策 う……。

周瑜 私とオマエとの友情に、

言葉の説明が必要なのかと聞いているのだッ!!(怒)

孫策 ううううッ!?




周瑜 しかし、あえて言葉にするならば。

周瑜 この魚の骨の山は、

私とオマエの友情の証と思うがいい。(笑)

孫策 さ、魚の骨がか?

周瑜 そうだ。

この魚の骨に、
私のオマエに対する想いが込められているのだ。

周瑜 さぁ、食え!

むさぼるように食うのだッ。


孫策 そ、そんなコト 言われても……。



周瑜 あくまで私の気持ちを拒もうというのなら、

オマエとの友情はこれっきりだぞッ。



孫策 ……ち、ちくしょう……。

わ、わかったよぅ。
食えばいいんだろ、食えば!!




ボリ ボリ




孫策 ( うう。……生臭い……気持ちワリィ……)



…… ボリ ボリ ……



周瑜 ……むぅ?

いまひとつ、食が進んでいない様子だな。

周瑜 仕方がない。

少々早いが、取っておきを出すとするか。



孫策 げ!?

まだ何かあんのかよぅ?



周瑜 うむ。

とくと見るがいい!!


ずい!


周瑜 『 ぎうにう 』 だ!!

周瑜 ふふふふ。

これを手に入れるのは、苦労したぞ。(笑)




孫策 う、うわ……!?

なんだ、この不気味に白く濁った液体は?




周瑜 ふふふ。驚くのも無理はない。

周瑜 これは、『 ぎうにう 』 といってな。

牛の乳を搾って集めたものなのだ。



孫策 ちょ、ちょっと待て!?

まさか、そげな気色の悪いものを
飲めというんじゃないだろーな?

周瑜 そう言うと思って

飲みやすいよう人肌に温めておいた。

周瑜 ……先ほどまで、私の懐の中でな。(笑)




孫策 う、うぇえ……。

頼む。さすがに
それを飲ませるのは勘弁してくれ。(涙)

周瑜 何を言うか、伯符!

この期におよんで、まだそのようなことをッ!?



周瑜 あくまで私の気持ちを踏みにじるなら、

オマエを殺して私も死ぬまでだッ!!



孫策 …………。

( こ、この男だきゃぁ……)

孫策 ちくしょうッ。

飲めばいいんだろ、飲めば!!




ゴク ゴク




孫策 ( う、うぇ。……マジで吐きそうだ……)



…… ゴクリ ……



周瑜 くっ、 く くく……
く くぅ、くっく、くっくっくっく………♪

そうだ、その調子だ。

周瑜 私の気持ちが込められた

生温かい白濁の液を、飲み干すがいいッ♪

孫策 周瑜よ。

それ、なんだかすごくイヤな感じがする表現だぞぅ。(涙)





周瑜 ええい、つべこべ言うな!

周瑜 魚の骨も、『ぎうにう』も

まだまだ沢山 残っているのだぞ?



孫策 ま、待て!

無茶いうなよ、全部は無理だって!(涙)



周瑜 無茶だと? 無理だと?

まったくオマエは何を言っているのだ!(怒)

周瑜 出されたモノを、

残さず食べるのは当たり前のコトではないか!?

周瑜 ええぃ、まどろっこしい!

いっそ、こうしてくれるわ!




ドブ ドブ



孫策 げぇッ!!??



グチャ グチャ



周瑜 ふははははは!!

孫策 ( ……こいつ、混ぜやがった……)






周瑜 ふふふ。

なんとも凄まじい色と臭いよ。

孫策 ……………。

周瑜 まさに、

『良薬、口に苦し』といったところか♪

孫策 コレを、口にしろと……?(汗)





周瑜 情けないぞ、伯符!

オマエは、その程度の男だったのか!!

周瑜 たかだか魚の骨や牛の乳から

逃げ出すような男が天下を取ろうなど、片腹痛いわッ!

周瑜 笑止千万とは、まさにこのことだな!

孫策 ぐぅううう〜〜ッ!?

孫策 上等だぁ、食ってやるッ!

この孫策サマのクソ度胸、
見せつけてやらぁ〜〜ッ!




周瑜 おお♪

その意気だ。
それでこそ、我が親友 孫伯符よ。


ガツガツガツガツ


孫策 うぉおおおおおおおおおおッ!!(涙)





周瑜 ふふふ。

これで伯符の『かるしうむ』不足は解決だ。

周瑜 当主の怒りっぽい性格も改善され、

孫家の未来は明るいものとなるだろう。

周瑜 めでたし、めでたしだな。(笑)





孫策 ちくしょう、ちくしょうッ。

なんで、この俺様がこんな目に遭わなくちゃいけないんだ?

孫策 周瑜のヤツに、

悪意がないだけタチが悪い。

孫策 いったい、この怒りの矛先は

どこにぶつければいいのか!?






後日




孫策 おのれぇええええッ!

魏騰のヤツめ、たかが会計係の分際で
名門であることを鼻にかけやがって!

孫策 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!

金玉ねじ斬って、
口の中に詰め込んだらぁッ♪


呉夫人 ひぃいいいいいいい!?

呉夫人 ま、待ちなさい! 伯符!

貴方が、これ以上 むやみやたらと人を殺すなら
母は井戸に身を投げて死にますよ!!




ドタバタ ドタバタッ






周泰 呂蒙 張昭 ………………。



周泰 気のせいでしょうか?

ここ最近、
孫策様はますます怒りっぽくなってしまった様子。

呂蒙 うむ。

なんでも、周瑜殿の手で無理矢理
ゲテモノを食べさせられることが重なり、苛立っているとか。



張昭 はてさて?

いったい周瑜は何を考えておるのやら。





とかなんとか。



結局、孫策は 自身の短気が災いし、

怨みを買った者達の手によって暗殺されてしまうのだが。


その後を継いだ孫権も

兄 孫策と同様、かなりの問題児で

呉の人々に苦労は絶えなかったそうな。




♪ ちゃんちゃん ♪





天猿 コメント 一部、下品な表現があってスイマセン。

リアルに想像して、
気分を悪くされた方には
伏してお詫び申し上げます……。(汗)