三国劇場 |
喰らえ、我が想い ( 中編 ) | |
作: 天猿 |
【 前回までのあらすじ 】
呉夫人から相談を持ちかけられ、
孫策の短気な性格を直すべく決意した周瑜。
しかし、類は友を呼ぶ、とはよく言ったもので。
周瑜もまた、
熱くなってしまうと周囲が見えなくなる性格の持ち主だったりする。
さてさて、どうなることやら。
……うーむ。 しかし、よくよく考えてみると。 なかなか厄介な問題ではあるな……。 |
伯符の短気な性格を直す、と約束したはいいが。 実際、性格を直すのはなかなか至難のわざ。 |
……いやいや、しかし! いくら難しい問題であっても けっして投げ出すわけにはいかぬ。 |
去りゆく私に向けられていた 呉夫人様の、すがるような視線。 |
ふっ……。 美しい女性の気持ちを裏切るようなことがあっては、 美周朗の名がすたるというものよ。(笑) |
あまり気が進まないが、仕方がない。 ……あの男の知恵を借りるとしよう。 |
おいおい、周瑜の旦那ぁ。 無理難題を言うのは、やめてくれよなぁ。 |
虞翻よ。 やはり、貴公ほどの知恵者でも。 短気を直す方法は、わからないのか? |
『 三つ子の魂、百まで 』 って言うだろ? そう簡単に性格を変えられたら、誰も苦労しねぇよ。 |
……ううむ。 古今東西の文献に精通し、易術や医術にまで詳しい貴公なら。 何か、良い知恵を授けてくれると期待していたのだがな……。 |
ん? ……待てよ。 アレが応用できるなら、あるいは……。 |
む? 何か、よい案を思いついたのか? |
……いや、先ほど 周瑜殿が口にしただろ? 医術、という言葉。 そこから、ちょいとした心あたりを思い出してね。 |
……!? く、くわしく聞かせてくれっ!! |
孫策殿の、怒りっぽい性格。 ひょっとしたら 『 カルシウム不足 』が原因なのかもしれん。 |
……かるしうむ? |
うむ。 カルシウムとは、人間の骨を形成するにあたって 不可欠な成分なのだがな。 |
これが不足すると、常にイライラして、 怒りっぽくなったりもするのだ。 |
な、なんと? いや、まさにそれだ!! |
伯符はカルシウムが不足しているに違いない!! |
して、虞翻殿。 カルシウムとは、いかように補給すればよろしいのか? |
うーん。 やっぱ、カルシウムが豊富に含まれている 食物を多く摂取するのが一番だろうなぁ。 |
なるほど、医食同源とはよく言ったものだ。 ……で、何を食べさせると良いのかな? |
そぉだなぁ。 すぐに思いつく限りでは、 魚の骨とか、牛乳とか……かな。 |
ふむ? 『ぎうにう』とは? |
『牛乳』 書いて字の如く、牛の乳だ。 |
はるか西方の地では、広く飲まれているらしい。 俺達、漢民族にとっては にわかには理解できん食文化ではあるが、ね。 |
む、むぅうう〜〜〜。 |
なぁ〜〜んちゃって♪ |
わりぃ、わりぃ。 冗談だよ、冗談。 |
確かに、話した内容そのものは嘘じゃないけどさ。 |
無理矢理 人の性格を直そうなど 傲慢で歪んだ考えだと思うぜ? |
そもそも食べ物を そんな目的で使おうとする事自体が、 既に間違っていると言うか……。 健康的な発想から、ほど遠いだろ?(笑) |
……素晴らしい……。 |
へ? |
『 かるしうむ 』! 『 ぎうにう 』!! |
なんとも魅惑的な響きだ。 |
直せる……! これらをもってすれば、きっと伯符を マトモな人間に戻してやれるに違いない!! |
しゅ、周瑜の旦那? ……え、えーと。 まさか、本気で言っているんじゃないよな? |
ははははは♪ 本気に決まっておろう。 |
伯符を思う私の気持ちは、 いつだって真剣なのだからな♪ |
…げッ…!? |
…くっ、 く くく……く くぅ、くっく、くっくっくっく………♪ す、救ってやるぞぉ、伯符ぅ♪ |
……あ、あのぉ〜〜、周瑜どの? |
うはっ、はっ…はっは、は、はははっはは〜♪ ……い、今、いくぞぉお、伯符ぅう♪ |
き、聞こえていますか? |
わが友情の極み 『かるしうむ』 の洗礼を、 受けてみるのだぁあああ〜〜〜♪ |
……い、行ってしまった……。 |
ぐぅっ! ず、頭痛が……。 |
天猿 コメント: | 虞翻が医術に通じていたのは、史実ですが。 その他はフィクションですよ。念のため。 誤解のなきよう、お願いいたします。(笑) |