三国劇場 |
喰らえ、我が想い ( 前編 ) | |
作: 天猿 |
呉の孫策( 字は伯符 ) は、
非常に怒りっぽい性格の持ち主だったという
おのれぇええええッ! 王晟のヤツめ。この俺様に協力できねぇ、とは よくぞ ぬかしたものだぜッ! |
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!! 心臓えぐり出して、 ケツの穴から詰め込んだらぁッ♪ |
お待ちなさい、伯符! |
止めるな、オフクロッ! あのオッサンだきゃあ、勘弁ならねぇッ! |
王晟殿は 貴方の父 孫堅殿の知己だった お方ではありませんか。 |
その人を討伐するということは 義に背き、礼に欠く行為だと思わないのですかッ!? |
……う、うう〜〜。(汗) |
はぁ〜〜。 |
……おや? どうされたのですか、呉夫人様。 ひどく、お疲れの様子。 |
ああ、周瑜ですか。 貴方になら、相談してもいいかもしれませんね。 |
ふむ? |
伯符の短気な性格。 あれ、どうにかならないものかしら。 |
……う。(汗) あの男、また何かしでかしたのですか? |
ええ、まぁ……。 一応、今回はかろうじて、 未然に食い止めることができたのですけどね……。 |
しかし、王晟殿を見逃すように 伯符を説得するのは、本当に一苦労だったわ……。 |
なるほど。 確かに、現在の孫呉は 先代 孫堅様の死から再出発して間もない国。 |
かるがるしく 先代の知己を討つのは、得策ではありませんね。 譜代の家臣達の動揺をまねくのは、避けたいところ。 |
ええ。 いたずらに内部に不安を抱えるような マネは感心できません。 |
おおせのとおり。 |
しかし、伯符の性格上。 |
頭に血がのぼると、何をしでかすか 知れたもんじゃないのよねぇ……。 |
……それも、おおせのとおり、なんですよねぇ……。 |
はぁ〜〜。( ため息 ) |
( おいたわしや、呉夫人様 ) |
( あのような、ロクデナシの息子を持ったばかりに ) |
( ここは私が、なんとかするほかあるまい ) |
呉夫人様。あまり思い悩んでは、体に毒です。 いかがでしょう? ……ここは、この周瑜にまかせてくれませんか。 |
え? |
伯符の親友であり義兄弟でもある、この私が。 責任をもって、彼の短気な性格を直してみせましょう!! |
まぁ♪ |
まかせていただけますか? |
ええ。 ここは、ご厚意に甘えさせていただくわ。 すまないわねぇ、周瑜。 |
ははははは♪ 何を、そんな他人行儀な。 |
そもそも、伯符と私は義兄弟。 |
すなわち。 伯符の母上である呉夫人様は この周瑜にとっても、母に等しい方なのですぞ! |
おやおや。 嬉しいことを言ってくれるねぇ。(笑) |
我が子を頼るように、この周瑜を頼ってくだされ!! |
わかったわ、周瑜。 どうか、これからも私の力になってちょうだいね。 |
お約束いたします! これからは、あの頭がおかしいドラ息子のことで、 一人で苦しませたりはしませんから! |
え? ……ええ……。 ( あ、頭がおかしい……ドラ息子…… ) |
眉目秀麗にして頭脳明晰。 品行方正にして文武両道。 完全無欠の優等生である、この周瑜こそを。 |
息子として誇るがよろしいでしょう!! |
……そ、そうね。(汗) |
そもそも、伯符のごときモノは 身内の恥以外 何者でもありません! |
頭の中身は、 戦争と狩りに関することだけで、いっぱいいっぱい。 血に飢えたケダモノにして、殺戮の申し子。 |
もはや、人外の存在とすら言えましょう!! |
……うう……。 ( 一応、血を分けた私の子なのですけど ) |
おのれ、伯符め! |
わが母親に等しき方を、苦しめおって!! |
貴様の腐りきった性根、 この周瑜が、完膚無きまでに根治してくれるわッ!!! |
( し、しまった……。この私としたことが。 うかつだったわ…… ) |
( よりによって、この周瑜に相談してしまうとは ) |
( 伯符の一番の親友である男が、 まともな精神の持ち主であるハズがないとゆーのに ) |
( コイツもまた、熱くなると 何をしでかすのか わからない男だったのよね…… ) |
くっ、 く くく……く くぅ、くっく、くっくっくっく………♪ ゆ、許さないぞぉ、伯符ぅ♪ |
あ、あのぉ〜〜、周瑜どの? |
うはっ、はっ…はっは、は、はははっはは〜♪ ……い、今、いくぞぉお、伯符ぅう♪ |
き、聞こえていますか? |
わが正義の怒りを、受けてみるのだぁあああ〜〜〜♪ |
……い、行ってしまったわ……。 |
うぅっ! い、胃が……。 |
天猿 コメント: | 呉夫人が、孫策に王晟を見逃せたのは 史実ですが。 その他はフィクションですよ。念のため。 |