三国劇場 |
ロバな人達 (曹魏 編) |
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作: 天猿 |
三国時代。
この時代は、中国文学においても一大転換期であった。
『己の心情を包み隠さず表現すること』を、よしとする建安文学により、
あらたな詩の世界が開かれたのである。
その建安文学を代表する担い手が、
曹操・曹丕・曹稙の、『三曹』 及び 陳淋・王粲などの『建安七士』。
特に、文学を愛した魏の文帝 曹丕にとっては、『建安七士』達は家臣であり同志でもあった。
曹丕が帝位に昇る以前の、西暦217年。
……『建安七士』の一人、王粲の葬儀にて……
……うう。王粲よ。なぜ、これほど早く死んでしまったのだ……。(泣) そなたは臣下であると同時に、私にとっては友でもあったというのに……。 |
共に文学の世界を開拓する同志でもあり、詩を競う好敵手でもあった。 おぬしがいなくなって、私は寂しい……。心に、穴が空いたようだ……。(涙) |
た、太子殿……。 |
……王粲。 生前、貴公はロバの鳴き声が好きだったな? |
黄泉路へ旅立つ貴公への、はなむけとしたい。 これから、我々が全員で ロバの鳴き声をまねてやろう。 |
どんな弔いの楽曲よりも。鎮魂の歌よりも。 それこそが、貴公の魂を慰めてやれると思うのだ。 |
つまらぬ私の気持ち、だが。 ……王粲よ。どうか受け取ってくれまいか?(哀) |
……うう……ッ。(涙) |
……そう。そうなのだ。 一見、冷徹に見えるお方ではあるが……。(涙) |
いや。 幼い頃から、兄弟同然に育った私は知っている。 ああ見えて、実はとても心の優しい人なのです。(涙) |
袁家を滅ぼした際に、甄姫殿を強奪した方ではあるが。 そのようなかつての遺恨にとらわれていた自分が恥ずかしい。 これからは、曹丕殿にも曹操殿に変わらぬ忠誠を尽くすとしよう……!!(涙) |
( 家臣の死を悼むその姿。その心遣いに感じ入りました! 曹丕殿! ……あなたこそ、次代の皇帝にふさわしい方です!!) |
……と、いうワケで。 全員でロバの鳴き声を合唱したいのだが。(笑) |
さぁて……。(ニヤリ) 誰に、音頭をとってもらおうかなぁ……? |
??? |
よし、司馬懿。 オマエに頼もう。 ロバの鳴き声、いってみよーか!? |
……は? わ、私ですか? (こ、困った。ろ、ロバの鳴き声ってどんなんだっけ……?) |
ホレ、さっさと鳴かぬか。 ホレ、ホレ、ホ〜レ♪ |
……ヒ……ヒヒ〜ン、ヒヒ〜ン……。 ( ロバも、馬の仲間だし。こ、こんな感じでいいだろうか?) |
馬鹿者。(笑) 全ッ然、違うわ! |
ううッ!? |
器用に首をまわす以外には、ろくな芸当を持っていないのだな!(笑) ロバの鳴き声のマネすら、満足にできないのか!? この無能がッ!! |
……も……申し訳ありません……。(泣) |
( ひ、ひどッ…… ) |
次は、曹真と張郤♪ |
げげ!? |
二人とも。 それぞれ、やってみるがいい!! |
そ、それが……。 臣共も、ロバの鳴き声が どのようなものかは、存じておりません……。 ど、どうかお許しを……。 |
何だとぉ? (ジロリ) |
(う、うわ……) |
……………………………………………。 |
(ひぃいいいいいいい) |
アヒョォーンッ! アヒィーホヘ……アイィイイグヒヒィヒィ!!! |
…………!?? |
アヒヒ……ッ! キョヘヘ、キョヒィイーヒィヒイイイ!! |
(な、なんだこのとんでもない奇妙な笑い声は?) |
(そ、曹丕サマ……! ら、乱心なされたか……?) |
(この世のモノとは思えぬ笑い声……! こ、こんな不気味な男に、魏を任せておいていいのか?) |
……おい、オマエ達! 何を、固まっている?(笑) |
!?? |
今、私がやってみせたのが、ロバの鳴き声だ!! |
( マジカヨッ!?) |
(し、知らなかった……) |
( あげな不気味な鳴き声を 好きだった王粲殿って、いったい……?) |
( ううむ。芸術家の考えることは、わからん ) |
アヒョォーンッ! アキョォオ……キヒィイイキョヘッ……キョヘヘへへェエ!!!!!! ♪ ……ハイ! 皆様、ご一緒に!!……♪ |
( ……や、やれというのか?) |
言っておくが♪(笑) 王粲の死を悼もうとしない薄情者には、死あるのみじゃ!! |
……………………ッ!? |
ホレ、ホーレホーレ♪ どぉしたぁ、オマエ達? 鳴け! 鳴くのじゃあ!! |
……アッキョォオ……キョヘッ……ヘケケッケケ!! (え、ええい……こーなったらヤケだぁ……!) |
キヒィイモガモゲ、グヒグヒィイイイ!! ( ……鳴くというより、泣きたい気分です……) |
アキョキョキョ……グガゥア、イィヨォオン!! ( ……恨みますぞ、王粲殿……) |
うむ……!! なかなかスジがいいぞ、オマエ達!! |
だが、まだまだ甘い!! ロバの鳴き声とは! 人間にはマネできないほどの奇声なのだ!! |
喉を潰すような覚悟で♪ 人間の尊厳をかなぐり捨てるつもりで、鳴くのだぁああ! |
……グゲガァッファッ! ケヒケヒィイイッガグヒエグォアアアッガ! アキョァアアアアアッファグヒブァッ、キョハハハハハァハッ!! |
グヒィイハハハッヒィイハッ……♪ (うっとり) ( ふふ……うふふふふふ……) |
アキョォオオッ、ウッキョオオ! (どきどき) ( な、なにか楽しくなってきましたねぇ……) |
グガァアアアアアッ、アキィイイイヨオォォンッ!! (ぞくぞく) ( うむ……。何か、アブナイ悦びに目覚めた気分だな……) |
よいぞよいぞ! 私も負けてはおれぬなぁ……!! アキョォオ〜オオン! アヒィーハッハハッハッハッッハ!! |
♪アヒョォーンッ♪ キヒィイイキョヘッ……キョヘヘへへへへェッ!!!! (笑) |
天猿 : | 松竹梅さんのカキコがヒントとなった作品です。 ロバが不気味な鳴き声というのは、本当です。 以下のアドレスで紹介しているので、興味のある方はどうぞ。 http://www.kg.to/chausuyama/music_hall.htm そもそも、ロバとかシマウマは、馬とは違う種類に属する哺乳類だとか。 (……生物学的には、馬よりもカバに近いそうです) マジメな話、王粲の葬儀では相当に異様な光景が 展開されたことは間違いないかと思われます。 ちなみに、この時 曹操はまだ存命中です。 ふふふ。……よく太子の座を失わなかったね、曹丕サマ。 (はぁと) |