三国劇場 |
嘘のような、ホントの話 (呉伝:君臣暴発編) |
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作: 天猿 |
【 これまでのあらすじ 】
皇帝に即位し、得意絶頂な孫権は、
重臣 張昭の意見を無視して北方の公孫淵に使者を派遣。
しかし、見事に大失敗。
張昭との喧嘩も、修復不能寸前まで深刻化する。
ようやく孫権も、頭を冷やし 張昭に謝罪することを決意するのだが……。
ん? 門の外が、妙に騒がしいな? |
……お、お爺様 大変よ。 門のところに、それはそれはガラの悪い男が来てて。 先ほどから、がなり散らしているのッ!! |
……ぬぅ……? |
きっと、最初に土を盛って門を固めた犯人に違いないわ。 どうしましょう……? |
……ふぉふぉっふぉ♪ なるほど、ようやく己の非を悟りおったようじゃの。 とにかく、ツラだけでも拝んでやるか。 |
おおぉーい、ジジイ!! 聞こえてるかぁ? |
返事しろよぉ〜〜〜! |
悪ぃ、認める。 間違ってたのは、こっちだったわ。 |
( う……。相変わらず、非礼な若造じゃ。 あれが、人に謝る態度か? ) |
……うう……。 なんて男かしら。青い目に紫のヒゲ。 どっからどーみても、ヤンキーそのものだわッ!? |
……無視しよう。 あんまりしつこいようなら、 ワシは病じゃと伝えて、お引き取り願え。 |
……うう……。ジジイめ……。 こっちが誠心誠意を尽くして謝罪してるのに、無視するとは……!? |
コラッ、そこのならず者!! お爺様は病なのよ、諦めてさっさと帰りなさい!! |
なんだと、この小娘!! 俺様……もとい、朕がどこのどなた様か知っての言い草なのだろうな!! |
……おーほほほほほほほほッ!! 無知蒙昧にして粗暴な言動も、ここまで来ると笑ってしまうわッ。 |
なにぃ!! |
いいこと、『 朕 』と言うのはね、 皇帝しか使ってはいけない言葉なのよ!! |
これすなわち! この呉では、皇帝 孫権様だけに許される一人称。 オマエのような、不孝者でアル中で恩知らずなお調子者が 自分の事を朕などと言うんじゃないッ!! |
……え、えーと。 そこのお嬢さん? 非常に、言いにくいことなのだが……。 |
……はい? |
その、不孝者でアル中で恩知らずなお調子者、がな。 ……我らの皇帝、孫権様なのだ……。 |
………う、嘘……。 |
認めたくない気持ちは、わかる。 私だって、認めたくない。そんな男が、一国の皇帝などと……。 だが、これは現実なのだ。 |
ええい、ごちゃごちゃとウルサイ奴らだな! もういい、ジジイが出てこないというなら いぶり出すまでのことだぁあああ!! |
……げッ……!? |
門に火をつけてやる!! そーすりゃ、ビビって飛び出してくるだろーよ!! うはははははははははははは!! |
わわわわわッ!? |
ひぃいいいいいいいいいいいいッ!? |
派手に、燃えろやぁああ〜〜〜〜〜ッ!!(無双3: 黄蓋風 ) |
……ゴーッホ、ゴホゴホゴホッ!! こらぁ、若造!! なんてコトするのぢゃ!? |
うははははははははは!? やっぱり、そこにいたかぁ、ジジイ!! さぁ、出てくるのだ!! そして、俺の謝罪を受け入れるのだあああ♪ |
馬鹿もぉーん!! 誰が出るもんかぁ!? そっちがそうくるなら、門をますます固めるまでのことぢゃあああ♪ |
……わぁあああああああ!? お、お嬢さん!! もはや、奴らは尋常ではありません!! ここから早くお逃げくださ……。 |
……あ、あれ? |
……いつのまにか、娘の姿が見えぬな。 どこへいったのだ……? |
うはははははああああッ♪ 徹底抗戦じゃ、籠城じゃ、聖戦じゃッ!! |
たとえ死すともッ!! ……あの若造の思うようには、させないからなぁああああッ!! |
はいはい、オジイチャン。 もーいいから。 ……そこまでにしておきましょうね〜。 |
……な、なんじゃと!? この敗北主義者めッ!! ええい、所詮は小娘。 この場に及んで怖じ気づくとはッ!? |
……黙れ。 若い私は、オジイチャンと違って未来ある身なのよ? |
……ぐ…ッ。 |
喧嘩の相手が孫権様だったなんて……。 そーゆー大事なことは、最初に説明して欲しかったわ!! ( たぶん、信じることはできなかったでしょうけど……) |
うう……ッ!? 何をする? 放せ、放さんかぁッ!? |
ふふふ。 古来、籠城戦とは味方の裏切りによって 決着がつくことも多いのよね……。 |
……ま、まさか……!? |
うおおおおおおおお〜〜〜!?(泣) ユダめぇえ!! 明智光秀めぇ!! ブルータスよ、おまえもかぁ〜〜!! |
すいませんねぇ、孫権様。 ウチのオジイチャン、年のせいか 最近 わけのわからない言動が目立つようになって……。 |
ははははははは。 オッケイオッケイ。 なーに、悪いようにはせぬ。お手間を取らせたな? |
いえいえ。 皇帝陛下に、わざわざ屋敷まで足を運ばせてしまったのですから。 このくらい、当然ですわ♪ |
ふふふ。なかなか道理をわきまえた娘よ。 よーし、兵士ども。ご老人を馬車に積み込めぇ!! そして速やかに、我が城へと連れ去るのだぁあ!! |
うおおおおおおおおおおお〜〜〜!?(泣) これは拉致じゃぁああ!! 誘拐じゃぁあああああああ!! |
ふ……。どうやら、この勝負 俺の勝ちだな。 だが、勝利とはどこか虚しいものだ……。 |
……虚しいのは私です。 ていうか、孫権様。当初の目的を忘れてませんか? 張昭殿に謝罪するために、ここに来たのでは? |
……あ。 そー言えば、そうだっけ? |
……そもそも、どこの世界に 家臣の家に火をつける皇帝がいるのですか!? 後でそのことも、しっかり謝るのですよ!! いいですね? |
……うう……。 |
( ちっくしょー、うるさいヤツだな。いつか、コイツもいじめてやる!) |
……ふぅ……。 まったく嵐のような数日間だったわ。 それにしても……。 |
……我が国 呉には問題児が多いというけど。 絶対、一番の問題児は君主の孫権様よねぇ……。(笑) |
このぶんだと、他にも何をしでかすやら。 後継者問題を深刻化させたり、 立派な功臣を憤死させたりとかしなきゃいいんだけど、ね……。 |
天猿 : | 孫権が門に火を放ったり、無理矢理 馬車に張昭を押し込んで 運び去ったのは、史実です。……念のため。 なお、張昭の孫娘に関しての記述は、嘘八百。全てを鵜呑みには、なさいませんように(笑) |