三国劇場
嘘のような、ホントの話
(呉伝:君臣激闘編)
作: 天猿



【 これまでのあらすじ 】

皇帝に即位し、得意絶頂な孫権は、
重臣 張昭の意見を無視して北方の公孫淵に使者を派遣。

そんな孫権に腹を立て、館にこもってしまった張昭に逆切れし、
彼の家の門を土で固める始末。

さてさて、張昭の反撃やいかに?



孫権 はーっはっはっはははははははは!!

いやぁ、愉快愉快。
ジジイめ、今頃 青い顔してるんだろうなぁ♪



陸遜 ……そ、それが。

報告によると、張昭殿は門のところで必死に土を運んでいるそうです。

孫権 そーだろ、そーだろ。
土をどかさないことには、家から出ることもできないからなぁ。

まぁ、素直に出仕して詫びを入れるなら、許してやらんこともない。(笑)

陸遜 ……ち、違います。

門の外の土は、そのまま。
張昭殿が、運んでいる土は門の内側からでして……。

孫権 ……へ……?




そのころ、張昭の館では



張昭 者共〜〜!!

積めぇ、どんどん土を積むのじゃぁああああ!!

……もう、お爺様ったら。張り切っちゃって♪

張昭 ふふふふ。

いかんのぉ、どうも年甲斐もなく熱くなっておるようじゃ♪



……でも、どういうこと?

門の内側からも、土を積み上げるなんて?



張昭 ……ふぉふぉっふぉ♪

門の内側から、こちらが土を積んで固めたのは、
ワシの意思表示なのじゃよ。

張昭 現在 我が家の門は、
内側と外側、
二つの土の山によってサンドイッチ状態にある。

張昭
……これ、すなわち。

『家の外に出るな』という嫌がらせで、門の外に積まれた土の山に対し。

こちらは、門の内側から土を盛り、『家の外に出る気はない』と皮肉で返したことになるのぢゃ♪





な……なるほど。さすがはお爺様!!

なかなかに、洒落の効いた対応だわ♪

張昭 あーはっはっはっはっはっは。



一方、孫権の館では




陸遜 ……そ、孫権様……?

いったい、張昭殿は何を考えているのでしょう?

孫権 ……ふ……ふふ。

うむ、ヤツが何を考えて、このような愚挙に出たか。
俺には、手に取るようにわかるわい……。



張昭
やーいやーい♪

若造、こっちも出仕する気なんか ないんじゃぞぅ!!
門の内側も土で固めてやったのはな、家から出る気がないってこった!!

うひゃひゃひゃひゃひゃ!!




孫権 ……よかろう……。断固、戦ってやるぞ……。



陸遜 ……そ……それが、孫権様……。

どーやら、先ほど入ってきた報告によると、
そうも言ってられない状況になりつつありまして……。

孫権 ……ん?

なんだ、回りくどいやつだな。その報告ってのは?



陸遜 孫権様が、公孫淵に送った使者が斬られました。



孫権 な、な、な、なぬぅうううううう〜〜〜〜!?

陸遜 どーやら、この件に関しては張昭殿が正しかったようですね……。

孫権 なんでなんで?

馬を要求したのが、悪かったのかぁ?

陸遜 いえ、そういう問題でもないかと。

単に、公孫淵が方針を変更しただけだと思います。
魏に臣従するのはイヤだけど、呉に臣従するのはもっとイヤってことでしょうね……。

孫権 なんだとぉ!?

陸遜 公孫淵から見れば、孫権様は
『南方で勝手に皇帝を名乗ってる独立勢力』。

対等に付き合う相手ならともかく、膝を屈する相手ではない、と考えたのでしょう。

孫権 な、なんてムカつくヤツだ……!!

急に外交方針を変えるとはっ!?
まったく恥を知らないにもほどがあるっ!!

陸遜 ( ……アンタも、そーでしょーが )

とにかく、今は張昭殿に謝るしかないですね。
素直に、自分の過ちを認めるのも、君主たるものには大事な美徳ですから。



孫権 うううう……。

あのジジイに頭を下げることになるとは……。
すっげームカつく……!!




陸遜 ……孫権様。

いい加減にしないと、私も怒りますよ?

孫権 ……う……。陸遜まで……。

わ、わかったよぅ。ジジイに謝ればいいんだろ、謝れば!!




孫権の暴挙に対し、暴挙で返した張昭。

赤壁の戦いでは読みが外れたけど、今回はバッチリ 的中。

孫権の鼻っぱしらを、大いにヘシ折ることに大成功。


しかし、わからず屋の孫権と、頑固者の張昭のこと。

素直に和解できるかどうか。


次回、さらに波乱に満ちた展開に刮目すべし!!




天猿 : 張昭が門の内側から土を盛ったり、
公孫淵が呉の使者を斬ったのは本当です。念のため。