三国劇場 |
みょうさい | |
作: かいがら 様 |
漢中守護からいったん鄴に帰還した夏侯淵。
その夏侯淵のもとに手紙が届いた。
翌朝、軍議が終わり…
おい妙才、お前、今日にも漢中に帰還か? 寂しくなるな、また…。 |
ああ…。(上の空) |
ん? どうした? 目の下がまっくろだぞ? |
…おい元譲、今いいか? |
ん…? 本日は取り急ぎのこともないので、構わんが…。 |
その…悩みがあって。 聞いてくれ。オレに答えをくれ! お前以外に頼る人間がおらん! |
おいおい、せかすな…。落ち着いて話せ。 何があった? いちから説明しろ。 |
お、おう、わかった。実は、もうと… いや、魏王閣下から親書を頂いた。 その内容が問題で。 |
親書を頂くことになんの問題がある。 昔ならいざ知らず、今の閣下から親書を頂いたのだ。 むしろ名誉であろう? |
うーん… やっぱり言葉ではうまく説明できん。 …いや、とにかく見てくれ。 |
ああ、親書をぞんざいに扱うな! ったく…。どれ…。 |
宋建が謀反を起こしてから30年余。 お前は一度の戦闘によってこれを滅ぼした。 仲尼も言っている。 『わしとおまえは顔回に及ばない』と。 |
…? なんの問題があるのだ? お前は評価されてるのだぞ? ひょっとして「仲尼」やら「顔回」が誰かわからないとか? まず「仲尼」とはな… |
おい、そんな知らないおっさんの事はどうでもいいぞ。 問題はその後だ。 |
おっさんって…(苦笑) |
とにかくその先だよ。 はやく読んで、オレを助けてくれ! |
わかったわかった…。 とにかくせかすなって…。 |
…だが、お前は勇気のみを頼みにしてる所がある。 時には臆病にもならなければ、一人前の指揮官にはなれんぞ。 |
…ほら、言わんことではない。 妙才、オレも普段からお前に注意しているとおり、陛下も… |
違う違う! もどかしいな…! とっととその先を読めよ! もう、最後だけ読め! |
耳元で怒鳴るな…。 (本当にせっかちだな…) っと… |
…不用意に勇をたのむのは一兵卒の芸当であるから慎むように。 これからは「妙才」を見せてくれ。 期待している。 |
…だから勇をたのむのは……。 |
ああ、じれったい! オレが聞きたいのは「『妙才』を見せてくれ」だよ! |
…ん?なんの問題がある? |
魏王閣下は何考えてんだ? |
「妙才」を見せろって… オレとお前と閣下はガキの頃からの知り合いじゃねーか。 見せるもなにも、何十年もオレを見てるだろ? |
今更… オレ、何を見せりゃいいんだ? |
…ったく…。(苦笑) だからお前は閣下に浅慮だと言われるのだ。 |
(血相変えて)なんだとっ!? お前でも、言っていい事と悪い事が…! |
いいか? 落ち着いてよく聞け。 …これは閣下の掛詞だ。 |
…ん…? どういうことだ…? |
昔からこういうの好きだっただろ? 閣下は… この場合は、お前の字と「妙才」を掛けているのだ。 |
ははぁ、わかってきたぞ!! オレを見せるのでなく、オレの「妙才」を見せろって事だな! |
ああ、そうだが…。 本当にわかったのか? |
おう、完璧だ! ははは! さすがは元譲だな! |
あ〜…。 本当に大丈夫なのか…? |
ああ、くどいぞ元譲! これですっきりとして漢中に戻れそうだ! はははははっ! |
(…何か心配だ…) |
お帰りなさいませ。夏侯征西閣下。 魏王閣下のご気色はいかがでございましたでしょうか? |
おう、張郤、留守居、ご苦労であった! 魏王閣下はお健やかであそばされた! また、閣下からじきじきに親書を賜った! |
それはようございました…。 して、親書とは? |
うむ! オレに「妙な才能を見せろ」と! |
!? またそれは妙な話でございますな…? |
「妙才」を見せてくれ、とあった! 軍功でない、オレの新しい魅力を見せろって事だろ! きっと! |
(何か微妙にズレてないか…?) ははぁ、それで、いかがなされますので? |
ふふふ…オレに秘策あり! これから土木構築関係にはオレも参加する! |
? い、いや、総大将がそのような事を軽々しく…。 |
(遠くを見つめながら) はははっ!孟徳め! |
オレに、夏侯一族に土木の才があるとは思うまい! オレの妙な才能、見せ付けてくれるわ! |
貴様の注文通りにな…! ははははは! |
(だ…だめだぁ…。この人、自分の世界に入ってるよ…) |
かいがら様 コメント : | とまあ、こんな訳で、閣下はじきじきに 逆茂木修復を行なっていたわけです。 ああ無常。 |
天猿 : | ははは。夏侯淵の馬鹿っぽさが、いい感じで出ている作品ですね。 実際、こんな風な勘違いで土木工事に参加して 黄忠に斬られたのだとしたら……。曹操も泣くに泣けない話ですなぁ♪ |