三国劇場
安楽公と呼ばないで
作: 天猿




第一次北伐。街亭の戦い。あまりに大きな犠牲を払った敗戦。

泣いて馬謖を斬った孔明。

大きな期待をかけていた俊才を
自ら手にかけただけに、その失意もまた大きかった……。



孔明 ……馬謖よ。(涙)

そなたには、蜀の明日を任すはずだったのだ…。
惜しいかな馬謖。悲しいかな馬謖。



魏延 ひそひそ。

(大変な落ち込み様だ。…無理もないが。
慰められるのは、一人しかいないな)

趙雲 こくり。

(うむ。もうじき、来るはずだ)



劉禅 あ、あのうー。皆様方、なにか御用でしょうか?



魏延 おっせーな。

ほれ、我等の軍師様が傷心の様子だ。
慰めてこいや。

趙雲 俺達が戦っているのは、先主の遺志のためであって、
おめーのためじゃねぇ。

……そこんとこ、わかっているよな?



劉禅 は、はい。



魏延 趙雲 わかってんなら、さっさと始めろや。





劉禅 ……こ、孔明様。元気だして…。

孔明 …………ッ!?

こ、このクソガキャアッ。

劉禅 ひぃ!!

孔明 まさか慰めてるつもりか?

ああん!? 手前ごときウスラ馬鹿息子に同情されても
ムカつくだけじゃ、ボケッ。消えうせろッ。

劉禅 ……うう!



魏延 (…ほっ。とりあえず、孔明殿に元気は出たようだ)



孔明 お飾りがつまんねー気を効かせて口を開くんじゃないッ。

先主の劣性遺伝子のみ受け継いだゴミ!
馬謖の髪の毛一本の価値もない、クズ!!

劉禅 …………うううう!!



趙雲 (…ほっ。すっかり元気な、いつもの孔明殿だ)



劉禅 しくしくしく。(泣)

孔明 魏延 趙雲 やーい、やーい!(笑)




数十年後。晋国の宴席にて。




劉禅 いやぁ、ここは楽しい。

蜀のことなど、思い出しもしません。ははは…はははははは。



そう語る劉禅は、それはそれは嘘のない目をしていたとか。





天猿 : 以前、呉ん太さんのサイトにて、別のペンネームで投稿した作品。

昔の作品を引っ張り出すのも気がひけるのですが、
最近 どうも切れのいいネタが出てこないので。苦肉の策、ってヤツです。(笑)