三国劇場
GO! GO! 憎まれっ子 (最終話)
作: 天猿



『 これまで のあらすじ 』

最悪の不良少年だった曹操の、ある日の遊びは、

『 金にあかせて、貧しい物売りをからかうこと』。


最初に、怪しげな薬売りから秘薬をせしめ、

お次は、ムシロ売りの少年に目をつけた曹操。


さてさて、ムシロ売りの少年の運命やいかに?


曹操 …ふふふ…。

( さて。このムシロ売り、どーしてくれよーか? )

曹操 ………ふふふふ。

( そうだ! あの怪しげな薬売りから奪い取った薬の
 実験台にしてやろう )

曹操
……………………ふふふふ。

( 万が一、なにか不都合なコトが起きてしまっても。
 相手は卑しくて哀れな貧民だしな。
 
 どうなっても知ったこっちゃないや♪ )






劉備 ……ぼ、坊ちゃま。

ど、どうかされましたか?



曹操 ……別に。(笑)

……いや、先ほどは、すまなかったな。

まったくもって、立派な孝行息子なオマエに対して、ひどい事を言った。

劉備 ……い、いえ。

そんな……。



曹操 ……いいだろう。オマエの売っている品を、
全部 俺が買ってやろう。

劉備 ……え、えええええ!? ほ、本当ですかッ!?(嬉)

ありがとうございます、ありがとうございますッ!



曹操 ……ただし。

この薬を飲んでもらおう。

劉備 ……え? ええ??

な、なんですか、この薬は?
僕の体は、どこも悪くないですよぅ……。

曹操 ……いや、病気を治す薬ではなくて。

『 一気に体を成長させる妙薬 』、だそうだ。



劉備 ……そ、そんな薬、飲めと言われても……。

曹操 …まぁ、背を伸ばしたい俺が手に入れた薬なんだけど。

さすがに、いきなり飲むのは俺だって怖いからね。(笑)
……そこで、オマエを実験台にしようと思うのだ。

劉備 ……な……。

( なんてヒドイ人だッ! そんなコトをハッキリ 口にするなんて。
 よ、……世の中には、こんな人もいたんだ……)



曹操 ……まぁ、モノは考えようだぜ、ムシロ売りの孝行息子よ。

オマエだって、背が伸びたら嬉しいだろう?
立派な武将になって、母親に今以上の孝行ができるかもしれんぞ?

劉備 ……う……うう……。

で、でも……。



曹操 ……ええい。煮え切らないヤツだな。

こうなったら、力ずくで飲ませるまでよッ! 食らえッ!

劉備 へ?



バキッ



劉備 ぐ、ぐはッ!?



曹操 ……よし。

ここで、口の中に流し込む、と。



グイグイ



劉備 ひ、ひいいいいい!(泣)

(……ひ、人を信じた僕が馬鹿だったのか? )



曹操 ……よしよし。しっかり、飲みこんだようだ。

さて、効果は現れるのだろうか?



ミシ ミシ



劉備 いやぁぁああああああッ!?

腕の骨が、伸びるゥううう〜〜〜ッ。

曹操 ……おおッ! 凄い!!  本当に効果があったとは!?



ニョキ ニョキ



劉備 うきゃぁああああああッ!?

耳がッ、耳が伸びていくぅうう〜〜〜?

曹操 ……げげッ! おかしい!!  これは、予想外の展開だッ!



……ピタリ



劉備 …………はぁ、……はぁ……。

よ、ようやく止まった……。

曹操 ………………うむ。

……ここで、止まってしまったか。……と、なると。
非常に、残念だが。この薬は、偽物だったようだ……。



劉備 ……へ?

曹操 『 一気に体を成長させる妙薬 』

とは聞いていたが、結局 成長したのは腕と耳のみ、だからな。



劉備 ………そ、そりゃぁ……。

…腕と…耳だけでは…。



曹操 うむ。

…つくづく、俺が試さなくて良かったよ。(笑)

劉備 ………なな!

ど、どーゆーことですか……?

曹操 ははは。

……ムシロ売り、鏡で自分の姿を見てみろ。見るも無惨だぞ。(笑)





劉備 ……な………なんじゃ、こりゃぁああああ〜〜〜ッ!!??

曹操 ははははははッ♪

な? スゴイだろ? まるで宇宙人だよな?(笑)




劉備 ……うわぁぁあああああああんッ!(泣)

曹操
……考えてみれば。薬売りのオヤジも、

『 一気に体を成長させる妙薬 』

とは言っていたけど。

『背を伸ばす妙薬』

……とは、いっていなかったからな。

どうやら、アイツに一杯 食わされたみたいだ。


劉備 ひっく、ひっく……。

こんな姿、母にどう言い訳すれば……。(涙)




曹操 知らん。

じゃ、後は頑張れ。……自殺すんなよ?

劉備 そ……そんな……ッ!?

せめて、ムシロとワラジを全部買ってくださるという
約束だけは守ってくださいよぅ……ッ!



曹操 ははは。

……何のコトやら??

劉備 ……ま、まさか……。

ここまでしておいて……。人をこんな姿にしておいて……。



曹操 うむ。……今日も、愉快な一日であった。

劉備 ……………………き、貴ッ様〜〜!!




曹操 はっはっはっはッ!!

ムシロ売りの少年、いつかまた会おう!
その時には、歯ごたえのある男になっていてくれたまえ♪

劉備 お、おのれぇえええええッ!!

赤マントの少年、俺は生涯をかけて貴様を許さない!
必ず……必ず、いつの日か貴様の前に立ちふさがってやるッ!




なんだかんだで、結局 それなりに楽しい一日を過ごしてしまった曹操。

悪者に天罰が降るのは童話の世界だけのこと。

『憎まれっ子 世にはばかる』

の、言葉は今も昔も真実だったりする次第。



もっとも、この一日がやがては彼の生涯に大きく関わっていくことに
なるかもしれない一日だったかもしれないけれど。

それは、また別のお話。


なには、ともあれ。

不良少年 曹操の物語は、これにて完結!




天猿: 劉備は耳と手が長かったそうですが。
       本人は、たぶん 悩んでいたのでしょうね。