三国劇場 |
オリジナル武器 | |
作: 天猿 |
わいわい、がやがや。 |
おや、皆様 お揃いで。 なんの話で盛り上がっているのですか? |
おお、趙雲将軍。 それぞれの自慢の武器について、話し合っていたところです。 |
はぁ。 自慢の、武器について、ですか? |
うむ。 武人たるもの、やはり自分の武器についての こだわりはあってしかるべきだからな。 |
うーん。 武器への こだわり、ですか。 |
まー、難しく考えるなよ。 別に、誰の武器が一番か決めようってわけじゃないし。 お気に入りの武器について、語り合っているだけだって。 |
趙雲も、是非 話に参加せい。 おまえもまた、関羽・張飛に劣らぬ豪傑。 この機に、おまえの武具についても、 色々と話を聞いてみたい。 |
……は、はぁ……。 |
と、いうワケで。 まずは私から始めよう。 |
私の自慢の武器は、ズバリ 『 雌雄一対の剣 』 ……だね。 親孝行として高価な『お茶』を母にプレゼントした際に、 この剣をいったん手放してしまったのだが……。 母はそれを喜ばず、 「孝行よりも大義を大事にしろ」と嘆いたのだ。 あの母の教えには泣かされたのう。 |
ははは。しかし、一番 有名なのは、それがしの 『青龍偃月刀』 ……では? なんと言っても重さ 約18キロの特注品で、 華雄・顔良・文醜をも斬り伏せた業物ですからな。 もはや、美髯・赤兎馬と共に、それがしのトレードマークと言えましょう。 |
おっと! 俺様の 『蛇矛』 ……だって、トレードマークとしちゃ負けていないぜ。 鍛冶屋に多くの矛を作らせたが、どれもデザインが気に入らず、ムカついちまってさ。 刃の部分を地面の岩にメチャクチャに叩きつけていたら、 いい感じの形になったという、面白い話も残っているんだぜ。 |
どれも素晴らしいですね。しかし、私の 『羽扇』 ……こそが、トレードマークとしては一番 アピール度が高いのでは? これを振るって颯爽と指揮する私の姿に、兵士達の心は奮い立つのです。 智恵を絞って戦う私には、自身を演出するアイテムもまた武器と言えましょう。 |
……いやはや。 どの品も実に見事ですな。 甲乙つけがたい、とは まさにこの事です。 |
はははは。 ……で? 趙雲の武器は? |
……え、えーと……。 ただの槍ですけど……。 |
はぁ? ……ただの、槍? |
い、いけませんか? |
いや、別に悪いとは言わないけどさぁ……。 |
私達、蜀陣営は一応 三国志の主人公サイドじゃないですか。 |
言うなれば、善玉。つまり、ヒーローだぜ? ヒーローたるもの、 かっちょいいオリジナル武器を持っていないと、 サマにならないだろーが? |
そ、そんなッ!? わ、私はヒーローではない、と言うのですかッ!! |
……武器が、ただの槍、ではねぇ……。(笑) |
納得いきません!! あえて申し上げますけど、 この中で一番 ヒーローっぽいのは 私じゃないですか!? それを、オリジナルの武器を持っていないくらいで……。 |
控えよ、趙雲! 今、話し合うは武器についてであるッ!! |
……うっ。(汗) |
そもそもだな。 少なくとも、一流の将たるもの、 自分の武器にはこだわるべきなのだ。 |
『 弘法 筆を選ばず 』、とも言うが、 やはり戦場で生きる者は 自分の命を預ける武器には気を配らねば。 それが、一流たる者の心意気よ。 |
……き、聞き捨てなりませぬッ! わ、私は一流でもない、と言うのですかッ!! |
ただの、槍、…ではなぁ。(笑) |
はははははははははははッ!! |
……くッ……。 ( く、悔しい〜〜〜!) |
皆さん、見てくだされ!! 『青紅の剣』 …を手に入れて来ましたッ。 曹操がお気に入りの武将、夏候恩に与えたという宝剣ですぞ! |
おおお!? |
しかし……。 それは、どうやって手に入れたのだ? |
そんなん、夏候恩をブッ殺して 奪い取ったに決まってんじゃないっすか。 |
……げ!? ( ご、強盗殺人……) |
いやいや。 これで、ようやく私もヒーローの一員ですな。 |
( いや、どっちかっていうと……悪……? ) |
く く く 、それにしても。 これから曹操の宝剣で、曹操の配下を 殺しまくることを考えると……。なんとも痛快ですなぁ♪ |
……うッ……!? |
( 怖ぇえええ! 悪だ。悪がここにいる! ) |
そして、これで私も一流の仲間入りですな。 |
嗚呼、それにつけても。 この剣の美しくも妖しい輝き……。 何人 斬り殺したところで、刃こぼれ ひとつすまい。うふふふ♪ |
……う、うん。 一流。仲間入り。 間違いねーよ。(汗) |
(一流の、犯罪者の、ね……) |
天猿 : | 劉備のオリジナル武器、 『 雌雄一対の剣 』 は小説 『吉川三国志』 から引用しました。 三国志演義を、吉川作治という作家が 読みやすくした小説。 つい最近までは、日本における三国志とは この小説のことだと言っていいくらいに読まれていました。 しかし最近は読んでいる人、少ないかもなぁ……。 蜀を正統とするノリがより顕著で、 魏や呉のファンには物足りないか、読みづらい作品ですから。 |