曹操の謀略によって、父と弟達を殺された馬超。
復讐として挑んだ涼州争奪戦にも敗れ、
その過程で妻子を含む一族の多くまでを失ってしまう。
流亡の末、蜀に辿りつくも、
馬超には常に寂しげな陰がつきまとうようになっていた……。
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…………………………。 |
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馬超のヤツ。
俺達から離れたトコロで、また一人 たそがれてやがる。
アイツがいると、なんか場が暗くなって嫌になるぜ。 |
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張飛殿。そのようなコトを言うものではありません。
多くの肉親を失ってしまった馬超の心の隙間は、
けっして、たやすく埋まるものではないのですから。 |
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趙雲将軍のおっしゃる通りです。
人は、家族を心の安らぎとするもの。
……思えば、馬超はかけがえのないものを
失ってしまった男なのかもしれません。 |
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うーむ。
どうしたものか? |
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……けっ。
どいつもこいつも、随分とお優しいこったな。 |
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……ん?
オマエ達、顔を揃えて何を悩んでいるのだ? |
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いーよ、兄者。ほっとけよ。
俺達が、どうにかしてやれる問題でもねぇし。 |
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……いや。そうでもないだろう。
そう判断するのは、
周囲の人間が出来る限りのことをした後の事。
よし。私が馬超に声をかけてみよう。 |
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……………………。 |
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馬超。
もう、蜀には馴れたか? |
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こ、これは劉備殿。
え、ええ。蜀とは良いところですな。
寒く渇いた涼州とは異なり、過ごしやすうございます。 |
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おまえの第二の故郷には、なりそうか? |
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はははは……。それは、なんとも。
家族がいない私には、どのように良いところでも、
心の安息を得ることは難しいゆえ。 |
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では、我々を家族と思えば良かろう?
少なくとも我々は、
家族の一員のように馬超のことを案じておる。
いつも寂しそうにしている馬超のことを……!! |
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……………………ッ!?
りゅ、劉備殿。
そ、それほどまでに私のような者のことを……。 |
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さしずめ、私のことは父のように思ってくれ。
そなたの本当の父、馬騰殿には遠く及ばぬ男ではあるが……。 |
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と、とんでもありませぬ!
しかし、なんとありがたき御心遣い……ッ!(感動) |
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こ、これは皆様。
お揃いで、いったい何事ですか? |
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馬超よ。
彼らも、そなたの家族になりたいのだ。 |
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な、なんと!? |
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私達のことは、弟とでも思ってください。
むろん、殺された本当の弟御である
馬鉄・馬休殿のような賢弟ではありませんが……。 |
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何を言われる!?
貴公達ほどの弟がいたら、どれだけ心強いか……。(感動) |
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それがしのコトは、兄とでも思ってくれぃ。 |
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おお……ッ!
これは頼もしき兄上でござるな!?(喜) |
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ワシは貴公のオジイサンになってやろう。 |
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なんとなんと!?
これは元気な祖父ができたことよ。(笑) |
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うう……ッ。(泣)
今日は我が人生、最高の日でござる!! |
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うう……ッ。(汗) |
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( 今日は我が人生、最悪の日だ!!) |
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( まったく、なんてことだ。
このままでは俺一人が心の冷たいヤツじゃねぇか!?) |
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( よ、よし。こうなったら…… ) |
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やいやい、馬超!! |
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こ、これは張飛殿? |
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俺様は、おまえの母ちゃんになってやろうッ!! |
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……へ? |
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そうだ、母ちゃんだ。オフクロ様、またはママンとも言う。
思いっきり、甘えてくれッ!! |
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……い、いや……。
それは、ちょっと……。 |
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遠慮することはないッ!!
さぁ、この胸に飛び込み、むせび泣くがいいッ。
可愛い息子め、ママンは百万ダースのキスをくれてやるぞッ!! |
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……わわわわわ!! |
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ええい。
来ないなら、こっちから行くまでよッ。
とりゃぁあああ〜〜〜ッ! |
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ひぃいいいいい〜〜〜ッ! |
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げげげげげッ!?
い、いかんッ。
誰か、張飛を止めろぉ〜〜〜!! |
翌日
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……馬超が出奔いたしました。
どうやら、蜀には二度と戻る意志がないようです……。 |
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な、なにぃいい〜〜〜!!(泣) |
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……くっ。残念だ。
どうやら、我々の気持ちが、ヤツには迷惑だったようだな。 |
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(いいや。
おまえの気持ちだけが迷惑だったんだよ、
この災害的馬鹿野郎!!) |