三国劇場
どうしたのもか
作: 天猿


……正史によると、華佗は曹操に仕えた人物の一人であったという……


華佗 私の名は華佗。

《神医》とまで称されるほどの医術を買われて
曹操殿に召抱えられた。

華佗 しかし。
どうやら曹操殿は、私を医者としてしか見てくれぬようだ。

本当は、儒学の教養も身につけた士大夫(知識人)としても
評価して欲しいのだが……。



荀ケ 私の名は荀ケ。

《王佐の才》とまで評されるほどの智謀を買われて
曹操殿に召抱えられました。

荀ケ ……しかし。
どうやら我が殿は漢王室をないがしろにしているようです。

本当は、儒学の教えに従って、漢王室に仕える丞相としての
立場を超えるマネはして欲しくないのですが……。




華佗 荀ケ …………………………。 




華佗 ……荀ケ殿。

お互い、曹操殿には含むところがあるようですな。

荀ケ ……華佗殿。

どーやら、そのようですね。

華佗 曹操殿に仕えるのも、もぅ うんざりでしてね。

田舎に帰りたいのですが……。

荀ケ 帰らせてくれないんでしょ?

殿って、本当に自分勝手ですよね。



華佗 荀ケ まったく腹が立つ。

どうしたものか。

華佗 荀ケ ………………。



華佗 ……気が合いますな。(ニヤリ)

荀ケ ……他人という気がしませんね。(ニヤリ)

華佗 荀ケ はははははは。



荀ケ ところで、華佗殿。

ひとつ、お聞きしたいことがあるのですが。

華佗 なんなりと。



荀ケ 殿はしばしば持病の頭痛で苦しみ、
痛みが増すたびに華佗殿を呼び寄せているとか。

あの頭痛は、やはり華佗殿でも治せないのでしょうか?

華佗 何をおっしゃる、荀ケ殿。
私は神医とまで呼ばれる男。

私に直せない病などありませぬ。

荀ケ ……ひょっとして。(ニヤリ)

わざと完治させていないとか?

華佗 いい気味でしょう?(ニヤリ)



荀ケ ナ〜イス、華佗殿♪

華佗 イエ〜ス、荀ケ殿♪




華佗 荀ケ あーっはっはっはっはっ!!




物陰にて


曹操 ……ほう……。

さて、あの二人。どうしたものか。



天猿 :  ……どっちも、正史では曹操によって不幸な最後を迎えています。
               曹操の後半生においては、彼らのような儒教の徒が目障りになっていったために。