三国劇場 |
親馬鹿で、馬鹿親 (後編) | |
作: 天猿 |
長坂橋では、阿斗(劉禅の幼名)を地面に投げつけた劉備であったが。
……やはり子供とは、可愛いもの。
阿斗が成長するにつれ、次第に親馬鹿ぶりが目立つようになった……
パパー、パパー。 |
おお、阿斗よ。 可愛いのぉ〜、可愛いのぉ〜♪ |
ひそひそ。 (…長坂橋では地面に叩きつけたりしたのに。 最近の殿は、すっかり阿斗殿に夢中ですね……) |
ひそひそ。 (……無理もありますまい……。出来の悪い子ほど……、 もとい、年を取ってからの子供は可愛いと言いますから ) |
ひそひそ。 (… 我々も、兄者の親馬鹿ぶりには困っているのだが…) |
コラッ! 下僕共ッ! そんなところで、ひそひそ話をしてないで、こっちへ来いッ!! 阿斗ちゃんが、お呼びだッ!! 阿斗ちゃんの言葉には絶対、従うこと。……わかったな? |
(……うう……、なんだか凄く嫌な予感がする…) |
まずは、張飛からだ。 |
……お、俺から……? いったい、なんの御用でしょう?(びくびく) |
うむ。 張飛よ、オマエの娘二人は、 幸いにも父親に似ず美人らしいな? |
は、はぁ……? た、確かに娘は二人とも器量良しですが……。そ、それが何か? |
よって、両方とも僕のオ嫁サンにしてやろう。 |
……げぇッ!? |
……おいおい、張飛。 もっと嬉しそーな顔をせんか? |
……兄者……、いっそ死ねと言ってくれぇ……。(泣) |
……わけのわからんことを。 阿斗ちゃん、遠慮することはない。両方、もらってしまいなさい♪ |
(… ひ、ひどっ…) |
……さて、次は孔明だ。 そなたに訊ねたいことがある。 なんとなく、無性に知りたいことなのだが……。 |
……ひ、ひぃ……ッ!? お手やわらかに……。 |
虎とライオン、どっちが強い? |
おお、阿斗ちゃん。末は、博士か大臣か? 幼い頃から、色々なことに興味を持つのはいいことだ。 孔明、是非とも答えてくれッ!! |
……そ、そんなことを言われましても……ッ! |
ん〜〜? わからんのか? |
……虎とライオンは、生息地域も生態も違う動物なのです。 どちらが強いかは、いかんとも知りがたいことでして……。 |
……よーするに、わからんのだな。 何が三国一の軍師だ。 理屈をこねて誤魔化すな、この物知らずめ! |
…………も、ものしらず…………、ですか?(涙) |
……しょうがないなぁ。虎とライオンに関しては、また今度だ。 では、次の質問は趙雲にしてみよう。 |
……うひゃあああッ!? 私に、ですか……? |
関羽と張飛、どっちが強い? |
おお、阿斗ちゃん。さすがだ、それは私も知りたいぞ。 武人の目から見て、どっちだと思う? 趙雲、是非とも答えてくれッ!! |
……そ、そんなことを言われましても……ッ! |
ん〜〜? わからんのか? |
……関羽殿と張飛殿は、味方同士ですから。 どちらが強いかは、いかんとも知りがたいことでして……。 |
……よーするに、わからんのだな。 何が、全身胆なり、だ。 言葉を弄して誤魔化すな、この卑怯者め! |
…………ひ、ひきょうもの…………、ですか?(涙) |
……まったく、どいつもこいつもッ! |
パパ、なんとかしてよぅ! |
うむ。虎とライオンに関しては。 今度、趙雲に命じて、両方とも捕まえに行かせよう。 |
そっかぁー。 捕まえてから、戦わせれば わかることだよね♪ |
ははは、そういうことだ。 |
さっすがぁ〜ッ! じゃあ、関羽と張飛は? |
うむ。関羽と張飛に関しては。 今すぐ、戦わせよう。 |
そっかぁ〜ッ。 どっちか死ぬまで、戦わせれば わかることだよね♪ |
ははは、そういうことだ。 |
………………………。 ……マ、マジ? |
阿斗ちゃんのために戦い、阿斗ちゃんのために死ね。 これは、命令だッ!! |
…………………………ッ! |
わーい、わーい。 |
はははははは。 |
……孔明殿。 …あの親子が君主だと、蜀の未来は真っ暗闇ですね……。(涙) |
……ははは……、趙雲殿、何を今さら…。 …そんなこと、わかりきったことじゃないですか……。(涙) |