三国劇場
親馬鹿で、馬鹿親 (後編)
作: 天猿


長坂橋では、阿斗(劉禅の幼名)を地面に投げつけた劉備であったが。

……やはり子供とは、可愛いもの。
阿斗が成長するにつれ、次第に親馬鹿ぶりが目立つようになった……


劉禅 パパー、パパー。

劉備 おお、阿斗よ。

可愛いのぉ〜、可愛いのぉ〜♪



趙雲 ひそひそ。

(…長坂橋では地面に叩きつけたりしたのに。
最近の殿は、すっかり阿斗殿に夢中ですね……)

孔明 ひそひそ。

(……無理もありますまい……。出来の悪い子ほど……、
もとい、年を取ってからの子供は可愛いと言いますから )

関羽 張飛 ひそひそ。

(… 我々も、兄者の親馬鹿ぶりには困っているのだが…)




劉備 コラッ! 下僕共ッ!

そんなところで、ひそひそ話をしてないで、こっちへ来いッ!!
阿斗ちゃんが、お呼びだッ!!

阿斗ちゃんの言葉には絶対、従うこと。……わかったな?

趙雲 孔明 関羽 張飛 (……うう……、なんだか凄く嫌な予感がする…)




劉禅 まずは、張飛からだ。

張飛 ……お、俺から……?

いったい、なんの御用でしょう?(びくびく)

劉禅 うむ。

張飛よ、オマエの娘二人は、
幸いにも父親に似ず美人らしいな?

張飛 は、はぁ……?

た、確かに娘は二人とも器量良しですが……。そ、それが何か?



劉禅 よって、両方とも僕のオ嫁サンにしてやろう。

張飛 ……げぇッ!?

劉備 ……おいおい、張飛。
もっと嬉しそーな顔をせんか?

張飛 ……兄者……、いっそ死ねと言ってくれぇ……。(泣)

劉備 ……わけのわからんことを。

阿斗ちゃん、遠慮することはない。両方、もらってしまいなさい♪



趙雲 孔明 関羽 (… ひ、ひどっ…)



劉禅 ……さて、次は孔明だ。

そなたに訊ねたいことがある。
なんとなく、無性に知りたいことなのだが……。

孔明 ……ひ、ひぃ……ッ!? お手やわらかに……。

劉禅 虎とライオン、どっちが強い?

劉備 おお、阿斗ちゃん。末は、博士か大臣か?

幼い頃から、色々なことに興味を持つのはいいことだ。
孔明、是非とも答えてくれッ!!

孔明 ……そ、そんなことを言われましても……ッ!



劉禅 ん〜〜? わからんのか?

孔明 ……虎とライオンは、生息地域も生態も違う動物なのです。

どちらが強いかは、いかんとも知りがたいことでして……。

劉備 ……よーするに、わからんのだな。

何が三国一の軍師だ。
理屈をこねて誤魔化すな、この物知らずめ!

孔明 …………も、ものしらず…………、ですか?(涙)



劉禅 ……しょうがないなぁ。虎とライオンに関しては、また今度だ。

では、次の質問は趙雲にしてみよう。

趙雲 ……うひゃあああッ!? 私に、ですか……?

劉禅 関羽と張飛、どっちが強い?

劉備 おお、阿斗ちゃん。さすがだ、それは私も知りたいぞ。

武人の目から見て、どっちだと思う?
趙雲、是非とも答えてくれッ!!

趙雲 ……そ、そんなことを言われましても……ッ!



劉禅 ん〜〜? わからんのか?

趙雲 ……関羽殿と張飛殿は、味方同士ですから。

どちらが強いかは、いかんとも知りがたいことでして……。

劉備 ……よーするに、わからんのだな。

何が、全身胆なり、だ。
言葉を弄して誤魔化すな、この卑怯者め!

趙雲 …………ひ、ひきょうもの…………、ですか?(涙)



劉備 ……まったく、どいつもこいつもッ!

劉禅 パパ、なんとかしてよぅ!

劉備 うむ。虎とライオンに関しては。

今度、趙雲に命じて、両方とも捕まえに行かせよう。

劉禅 そっかぁー。

捕まえてから、戦わせれば わかることだよね♪

劉備 ははは、そういうことだ。



劉禅 さっすがぁ〜ッ! じゃあ、関羽と張飛は?

劉備 うむ。関羽と張飛に関しては。

今すぐ、戦わせよう。

劉禅 そっかぁ〜ッ。

どっちか死ぬまで、戦わせれば わかることだよね♪

劉備 ははは、そういうことだ。




関羽 張飛 ………………………。

……マ、マジ?

劉備 阿斗ちゃんのために戦い、阿斗ちゃんのために死ね。

これは、命令だッ!!

驚く関羽 驚く張飛 …………………………ッ!




劉禅 わーい、わーい。

劉備 はははははは。




趙雲 ……孔明殿。

…あの親子が君主だと、蜀の未来は真っ暗闇ですね……。(涙)

孔明 ……ははは……、趙雲殿、何を今さら…。

…そんなこと、わかりきったことじゃないですか……。(涙)




天猿: 張飛の娘が二人とも阿斗の嫁さんになったのは事実らしいですけど。
その他はフィクションです。念のため。