三国劇場
親馬鹿で、馬鹿親 (前編)
作: 天猿


長坂橋にて


趙雲 我が殿!!  

この趙雲、身命を賭して敵陣を駆け抜け、
阿斗様を救い出して参りましたッ!!

劉備 おお!?

趙雲、阿斗よ!! 無事であったかッ?



趙雲 ははッ!!

それがしは、これこの通り血で汚れておりますが、
阿斗様には傷一つ負わせておりませぬ。

劉禅 ほぎゃあぁ、ほぎゃぁああ〜。(泣)

趙雲 ささ、劉備様。ご子息を、その手に抱いてあげてくだされ。

……武骨者の、それがしの手に抱かれていては、
なかなか泣き止んでくれませぬゆえ。(笑)



孔明 ……張飛殿。

趙雲とは、なんと素晴らしい男なのでしょう。
あれほど傷だらけになりつつも、わが身より主君の子を案じるとは……。(感涙)

張飛 まったくだな、孔明。

……趙子龍、ヤツこそは武人の鏡よ……。(感涙)



劉備 ……阿斗よ……。

劉禅 ばぶー、ばぶぅー。



劉備 てぇいッ!! (阿斗投げ)

趙雲 孔明 張飛 …………………ッ!?

劉禅 ふぎゅぅうッ!? (地面激突)

驚く趙雲 驚く孔明 驚く張飛 ……………………………ッッ!?



劉禅 ふぎゃぁああッ、ふぎゃあああああぁんッ!!(大泣)

劉備 …この、こしゃくな こわっぱめがッ!

オマエのせいで、あたら大切な大将を失うところであったわッ!!

趙雲 ……と、殿……!?

劉備 ……子供などは、失ってもまた作れば良いのだ。

…しかし、趙雲よッ! 
そなたほどの忠臣を失ってしまうと、2度を得ることはできぬ。
そなたに比べれば、私の息子など取るに足りぬわ……ッ!!

趙雲 うう……ッ! 劉備様、そこまで私などのことを……ッ?(感涙)

身に余る、お心遣いです。
不肖、この趙雲。これからも命がけで殿にお仕えいたすッ!!

孔明 張飛 ( 我々も、趙雲に負けないよう、命がけで仕えなければッ!!)




……その日の夜、劉備の幕舎にて……


劉備 ……阿斗よ……。

劉禅 ……ばぶぅ……。

劉備 ……うまく、いったな……。(ニヤリ)

劉禅 ……あいつら、本当に ちょろいでしゅね……。(ニヤリ)

劉備 ……痛くはなかったか?

クソ馬鹿な、子分共を騙す芝居とは言え、
パパは心が、ちぎれる思いだったんだぞ……!?

劉禅 ……あのくらい、我慢するでちゅ。

これでアイツら、ますます命がけで我ら親子に仕えるのでちゅから。

劉備 ……なんという、できた息子よ。(感涙)

おまえが受けた痛み、パパが替わってやりたいぞ。

劉禅 ……それは違うでちゅよ、パパ。(感涙)

痛い目に会うのは、あいつら下僕共で充分でちゅよぅ……。

劉備 むろんだ。こーゆーのは、これっきりだッ!

これからは、苦労は あいつらにさせて、
パパと阿斗ちゃんはオモシロ可笑しく暮らすのだからな!!(笑)

劉禅 へけけけ♪

……パパ、大好きでちゅよ♪(笑)




……ちなみに、劉備の幕舎の外では……


趙雲 孔明 張飛 ………………………………。

張飛 ……阿斗様が心配で、覗きに来てみたのだが……。(涙)

趙雲 ……孔明殿。

…知らない方がいいことって、世の中にはあるんですね……。(涙)

孔明 ……ははは……、趙雲殿、何を今さら…。

…そんなこと、わかりきったことじゃないですか……。(涙)




天猿: この親子に仕える人達にも、問題あるんでしょうけど。