三国劇場 |
親馬鹿で、馬鹿親 (前編) | |
作: 天猿 |
長坂橋にて
我が殿!! この趙雲、身命を賭して敵陣を駆け抜け、 阿斗様を救い出して参りましたッ!! |
おお!? 趙雲、阿斗よ!! 無事であったかッ? |
ははッ!! それがしは、これこの通り血で汚れておりますが、 阿斗様には傷一つ負わせておりませぬ。 |
ほぎゃあぁ、ほぎゃぁああ〜。(泣) |
ささ、劉備様。ご子息を、その手に抱いてあげてくだされ。 ……武骨者の、それがしの手に抱かれていては、 なかなか泣き止んでくれませぬゆえ。(笑) |
……張飛殿。 趙雲とは、なんと素晴らしい男なのでしょう。 あれほど傷だらけになりつつも、わが身より主君の子を案じるとは……。(感涙) |
まったくだな、孔明。 ……趙子龍、ヤツこそは武人の鏡よ……。(感涙) |
……阿斗よ……。 |
ばぶー、ばぶぅー。 |
てぇいッ!! (阿斗投げ) |
…………………ッ!? |
ふぎゅぅうッ!? (地面激突) |
……………………………ッッ!? |
ふぎゃぁああッ、ふぎゃあああああぁんッ!!(大泣) |
…この、こしゃくな こわっぱめがッ! オマエのせいで、あたら大切な大将を失うところであったわッ!! |
……と、殿……!? |
……子供などは、失ってもまた作れば良いのだ。 …しかし、趙雲よッ! そなたほどの忠臣を失ってしまうと、2度を得ることはできぬ。 そなたに比べれば、私の息子など取るに足りぬわ……ッ!! |
うう……ッ! 劉備様、そこまで私などのことを……ッ?(感涙) 身に余る、お心遣いです。 不肖、この趙雲。これからも命がけで殿にお仕えいたすッ!! |
( 我々も、趙雲に負けないよう、命がけで仕えなければッ!!) |
……阿斗よ……。 |
……ばぶぅ……。 |
……うまく、いったな……。(ニヤリ) |
……あいつら、本当に ちょろいでしゅね……。(ニヤリ) |
……痛くはなかったか? クソ馬鹿な、子分共を騙す芝居とは言え、 パパは心が、ちぎれる思いだったんだぞ……!? |
……あのくらい、我慢するでちゅ。 これでアイツら、ますます命がけで我ら親子に仕えるのでちゅから。 |
……なんという、できた息子よ。(感涙) おまえが受けた痛み、パパが替わってやりたいぞ。 |
……それは違うでちゅよ、パパ。(感涙) 痛い目に会うのは、あいつら下僕共で充分でちゅよぅ……。 |
むろんだ。こーゆーのは、これっきりだッ! これからは、苦労は あいつらにさせて、 パパと阿斗ちゃんはオモシロ可笑しく暮らすのだからな!!(笑) |
へけけけ♪ ……パパ、大好きでちゅよ♪(笑) |
………………………………。 |
……阿斗様が心配で、覗きに来てみたのだが……。(涙) |
……孔明殿。 …知らない方がいいことって、世の中にはあるんですね……。(涙) |
……ははは……、趙雲殿、何を今さら…。 …そんなこと、わかりきったことじゃないですか……。(涙) |