三国劇場
そんけん
作: 天猿



呉の、ある日のこと。

……孫堅と孫権が親子の会話をかわしていた際……


孫堅 孫権 はははははは。




周瑜 そんけん さまぁ〜。




孫堅 孫権 ……ん? 何だ。

私のことを呼んだか、周瑜?




周瑜 あ、用がありますのは

父上の「そんけん」様の方でして……。


孫権 ……む。

なんだ、私を呼んだのではなかったのか……。




孫堅 ふむ。

とりあえず私への用件を聞こうか、周瑜?


周瑜 劉表を攻める兵の編成が整いました。

後は、孫堅様の確認をいただくだけですが?


孫堅 わかった。

のちほど、見に行くとしよう。




周瑜 ……それにしても。

父子そろって同じ呼び方の名前では
結構 まぎらわしいものですね〜。(苦笑)

周瑜 おっと、失礼いたしました。

……では、私はこれにて。




孫堅 孫権 …………………………。



孫堅 のう、わが息子 孫権よ。

孫権 なんでしょうか、わが父上 孫堅殿。

孫堅 どうやら、呉に我ら二人の「そんけん」がいるのは、

まぎらわしいようだな?

孫権 そうですね。

私も前々から、そのように思っておりました。



孫堅 ……うーむ……。

やはり息子にも「そんけん」という名前をつけたのは
私の不明であったな。



孫権 ……では、父上。こういうのはいかがでしょう?

今からでも、私に新しい名をつけていただくというのは?


孫堅 それは良い考えだな。

……お♪ 
ちょうど今、いいのが三つほど浮かんだぞ。


孫権 おお♪

是非、お聞かせください。



孫堅 ■ その1 「酒乱ボーイ」 ■

しゅらんぼぅい、と読む。
酒癖の悪いオマエには、ピッタリの良い名であろう。

孫堅 ■ その2 「青目玉」 ■

あおめだま、と読む。
これも傑作だな。オマエは目玉が青いし。

孫堅 ■ その3 「髭ムラサキ」 ■

ひげむらさき、と読む。
これまた捨てがたい。オマエの髭は紫色だからな。




孫権 …………………………。

孫権 ち、父上。

他に、もっといい名前が浮かばなかったのですか?

孫堅 なんだと。
私のセンスにケチをつける気か?(怒)

この親不孝モノめが!!

孫権 うぅっ!?



孫堅 ええい、こうなったら
何が何でも先ほどの三つから選んでもらうぞ!

それがイヤなら勘当だッ!!

孫権 な、なななななっ!!??



孫堅 ふはははははは♪

さぁ、どうする? 
どれを選ぶのだ?

孫権 ………………。



孫権 ……す、少し 考える時間をください……。

孫堅 うむ。(笑)
最初から、そう言えばよいのだ。

この父に逆らおうなど一億年早いわ!

孫堅 まぁ、ゆっくり考えて選ぶがよい。

うははははははははは♪



孫権 ( ちっくしょぉー、このクソ親父、

 早く死んでくれねぇかなぁーッ!! )





息子 孫権の願いはかない、
それから間もなく パパ 孫堅は戦死することとなるのだが……。


結局、後世の人々は
彼らのまぎらわしい名前で苦しむこととなり、今に至る。




天猿 :  実際 まぎらわしいですよね、この二人。