三国劇場 |
狼顧の相(前編) | |
作: 天猿 |
魏の司馬懿は、真後ろに首を回すことができたという。
……ある日、彼が曹操に呼び出されたときのこと……
曹操様。私に、二人きりで話があるとか? |
うむ。 司馬懿よ。実はおりいって、そなたに尋ねたいことがある。 |
ははッ。何でありましょう? |
首を180度、真後ろに回す方法を ワシにも教えて欲しい。 |
へ? |
………いや〜、宴会の際に一芸として 詩を披露するのにも飽きちゃってさぁ……。 ここらで一発、皆を驚かせる芸を習得したいのだ♪ |
…ははは……、おたわむれを。 …私の場合は、特異体質ですから……。 ( な、何考えてやがるんだ、このオヤジは?) |
あ。 教えてくれんと言うのか? このケチめ。 |
だが諦めんぞ。何かコツがあるのであろう? あくまで教えてくれんというのなら、 死刑にするまでじゃ♪ |
…………………………ッ! ( おいおい、マジかよ!? ) |
言っておくが、ワシは本気だ。 |
( じょ、冗談じゃない。 ここは口から出まかせを言ってでも誤魔化すしか…… ) わ、わかりました。教えます、教えます。 |
おおッ♪ やったー。わーい、わーい。 |
( ……はぁ〜ぁ……。我が主君ながら、信じられん…… ) |
よーし。これで次の宴会での余の出し芸は、 「妖怪 首ぐるりん」 の物マネに決定だな! ……ふふ、これはウケるぞッ!! |
……はい? 何です、その「妖怪 首ぐるりん」ってのは? |
オマエのことに決まっておろう。 皆、陰で司馬懿のことを そう呼んでおる。 |
……………………。 |
天猿 : 司馬懿は「狼顧の相」と呼ばれ、首を180度 後ろに回すことが出来たと言われています。
まぁ、用心深い彼の性格を示すたとえ、なんでしょうけどね。