三国劇場 |
言えない | |
作: 天猿 |
私は荀ケ。 その神算鬼謀は王佐の才と称えられている。 さらには、高潔な精神で知られ、 清流派の一翼を担う者でもある。 |
……と、いうワケで。 馬鹿で下品なヤツは大ッ嫌いだ。(笑) |
じゅんいくどのぉ〜。 |
おや、虎痴殿…もとい許楮殿。 私に何か、御用ですか? (……ちッ。よりによって最悪なヤツが来やがった) |
うん、それ。 その「虎痴」について、知りたいの。 |
殿をはじめ、みんながオイラのことを「こち」って呼ぶけど、 「こち」っていったい何の意味なの? |
物知りの荀ケ殿なら知っているでしょ? おしえて、おしえて! |
ははは。 お安い御用です。(苦笑) |
(……さすがはわが魏国が誇る大トロ級の馬鹿よ。 自分のアダ名の由来も知らなかったとは……) |
( ! ) |
( イイ事を思いついたぞ。 よし、いっちょ からかってやれ) |
いいですか、許楮殿。 「虎痴」の「虎」は、動物の虎を意味しています。 そして、「痴」とは……。 |
わくわく。 |
「痴れ者」の意。 |
シレモノ? |
はい、「痴れ者」。 一般には「恥を知らない馬鹿者」という意味で 使われることが多い言葉です。 |
つまり、虎痴とは。 |
「虎にでも食われてしまえばいい、恥かしい馬鹿」 という意味なのですッ!! |
(がーんッ!) う、うぇえええええええええんッ!!(泣) |
……ううむ、許楮殿が泣きながら帰っていく……。 いやはや。 お馬鹿さんをからかうのは楽しいものだなあ。(笑) |
最近、許楮のヤツに何かあったらしい。 悲しみのあまり血を吐きつつ、毎日泣きながら 床に伏せっていると聞く。 荀ケよ。 いったい彼の身に何が起きたのか、知っていることはないか? |
(…い、言えないッ。 私が嘘を教えたからだんて、とても言えないッ) |
天猿 : 正しくは 「虎のように強いのに、普段はボーとしている男」 という意味です。……念のため。