三国劇場 |
全身 胆なり | |
作: 天猿 |
大喬お姉様。蜀の趙雲将軍をご存知かしら? |
もちろんよ、小喬。 曹操軍 数万の陣中を単身 一騎駆けして、 主君の御子息を救出した武将でしょ。 |
劉備殿は 「子龍は全身、これ胆なり」と評したそうよ。 |
すごいわねー。 |
ねー。 |
ところで、「胆」ってどういう意味かしら? |
そー言えば、何なのかしら? |
調べてみましょう。 ……小喬、本棚から国語辞典を取ってくれるかしら。 |
はい、お姉様。 |
えーと、胆、胆、……と……。 ふむふむ。 |
わくわく。 |
【 胆 】 <名詞> 〔生]。 胆嚢(タンノウ)の略。 肝臓(カンゾウ)から分泌される胆汁(タンジュウ)をいちじ ためておく袋。 |
……………………。 |
……肝臓って、「レバー」のことよね。 つまり、趙雲将軍は「100%レバー人間」なのかしら? |
いいえ、肝臓でなくて胆嚢だもの。この場合、「モツ」よ。 趙雲将軍は、「丸ごと モツ野郎」なんだわ。 |
………………………………。 |
き、気持ち悪いわッ。 |
な、生臭そう…。 |
全身 胆だもの。 きっと胆汁をまき散らせて歩く生き物なんだわ…。 |
そ、そうね。そりゃ曹操の軍勢だって、道を開けるわよね。 全身が内臓で出来ているバケモノが現れたら、 どんな勇者だって逃げ出すに決まってるもの。 |
こわいわねー。 |
ねー。 |
は、はっくしょん。 |
ははは。 趙雲将軍、どこかの乙女達に噂話でも されているのでは? |
いやだなぁ、軍師殿。 照れるじゃないっすか♪ |
天猿 : 「全身 胆なり」とは、「全身が肝っ玉」、
つまり すごく度胸があるという意味です。…念のため。