三国劇場
美髯公
作: 天猿



関羽は美髯公(びぜんこう)と呼ばれるほど、
美しいヒゲの持ち主であったという。

また、自身も そう呼ばれることを好ましく思い、
ヒゲを大切にしていたとか。



…… そんな関羽が、ある日 劉備に呼び出され ……




関羽 兄者、それがしに話があるとか?

劉備 ……うむ。

実は、おまえに頼みたいことがあってな……。

関羽 おお、何でも申しつけてくだされ。

劉備 いや、やはり やめておこう。

この頼みをすれば、きっと おまえを
苦しめることになるゆえに。。

関羽 兄者、何を迷われるッ!?(憤激)

兄者の頼みなら、それがし 死をも厭わぬ! 
たとえ肝脳を地にまみれさせようとも、応えて見せましょうぞッ!!

劉備 おお! では、頼もう!!

関羽 いざッ!



劉備 ヒゲ、剃れや。



関羽 ぬなッ!?

劉備 いやー、前々から言おう言おうと思っていたんだよね。

実は俺、ヒゲの濃いヤツって生理的にダメなんだわ。

関羽 ………………ッ!

劉備 この際、言わせてもらうけどさぁ。

そのムサ苦しいヒゲを
大切にしているオマエの感性は、
理解に苦しむんだよ。

劉備 ヒゲを汚さないように
「ヒゲ袋」とかいうキテレツな物を愛用しているにいたっては、
ハッキリ言って馬鹿そのものだ。

関羽 ……………………ッ!!

劉備 でかい図体した男が、
アゴから袋をぶら下げて悦に浸っているのだぞ?

知らない人から見たら、
「頭の可哀相な人」にしか見えん。

劉備 ……まったく。

常日頃より、おまえと行動を共にして
どれだけ私が恥かしい思いをしているか……。


関羽 …………………………ッッ!!



…………数刻後…………



張飛 あれ、雲長兄ぃ?

長兄といっしょにいたんじゃなかったのか?

関羽 ああ。

ヤツはついさっき、青龍刀のサビになった。




大滝 :  関羽は、自慢のヒゲを汚さないように絹の袋に入れて
       顎からぶら下げていた演義のエピソードが元ネタです